第19章 あなたのためなら何でも【暖和】※裏表現有
スマートフォンに入っているナビゲーションアプリで"居酒屋鰯"を検索すると、ここから15分程度で着くようだった。
玄関に向かい、靴箱からスポーツサンダルを出しそれを履き、最後にスマートフォンの手帳カバーに免許証が入っている事を確認すると、
よし。行こう!
私は杏寿郎さんを迎えに行くために、玄関を出た。
ナビゲーションアプリ通りに車をすすめると、無事"居酒屋鰯"に到着することができた。送迎用なのか狭い敷地でも、2台分の駐車スペースがあり、そこにバックで車を停めるとスマートフォンをタップし、着信履歴から"杏寿郎さん"を選択し電話を掛ける。
プップップ…ブルルルルルプルルルルル
…出ないなぁ。気がつかないのかな?
ブルルルルルプルルルルル
やっぱり出ない。
限られた駐車スペースを長々と占領しているわけにもいかず、
仕方ない…行くしかないか。
寝る直前だったし、慌てて出てきてしまった為、部屋着のままでもちろん化粧もしていない。こんな格好で他の元柱の方々にお会いするのは気が引けたがそうも言ってられない。なによりも、普段全然酔わない杏寿郎さんが酔っ払っている、という状況がとにかく心配だった。
鞄を手に持ち、車を降り、私は居酒屋の入口へと向かった。
「すみませーん」
カラカラと音を立てて扉を開ける。
「いらっしゃいませぇ」
するとすぐ、こちらに気がついた店員さんが近寄ってきてくれた。
「すみません…あの…夫の迎えにきたのですが、電話をしても出なくて…駐車場をお借りしてしまっているのですが大丈夫でしょうか?」
私がそう遠慮がちに聞くと、
「全然構いませんよ!それに今いらっしゃるのは、奥様のご主人さまがいらっしゃるグループだけなので、お急ぎ頂かなくても大丈夫ですので!」
愛想のいい店員さんが笑いながらそう言った。
「ありがとうございます!」
「奥の個室にいらっしゃいますので、ご案内します」
そう言って店の奥に進んで行く店員さんの後に続いた。