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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】


10歳の杏寿郎さんは安心したのか、その後すぐに眠ってしまった。そして、私もその安らかな寝息と温かさに釣られるようにして、再び眠りの世界へと落ちて行ったのだった。





 













…ん…?…身体が…動かない…?


なんだかとても暑く、寝返りを打とうとするも、何か重いものが身体の上に乗っているのか、身体が動かない。少しおかしいと思った私の意識が徐々に、眠りの世界から現実世界へと引き上げられていく。

そして、


「おはよう」


背後から聞こえた、とても聞き覚えのある声に


「…っ杏寿郎さん!?」


意識が急上昇し、身体は動かないので、首だけそちらに振り返る。


するとそこには、いつもの、20歳の杏寿郎さんの姿があった。

昨日眠りに落ちる時には、私が10歳の杏寿郎さんの身体を抱きしめていたはずなのに、いつの間に元の姿に戻り、いつの間にそうされたのか、いつも杏寿郎さんが私にしてくれているように背後から抱きしめられている状態になっていたようだ。

「いつ…元の姿に戻ったんですか?」

「俺にもよくわからない。だが身体の窮屈さで目が覚めてな。その時にはもとの姿に戻りつつあるようだった」

「…そうですか……よかったです…」

「俺の気のせいだろうか?心からそう言っているようには聞こえないが」

杏寿郎さんの言葉に、私はもぞもぞと動き、そんな私の様子に気がついた杏寿郎さんが腕の力を緩めてくれた為、私はグルリと身体の向きを杏寿郎さんの方へと向ける。

そしてお互いの身体が向き合うと、じっとその目を見つめた。

「…杏寿郎さんが元の杏寿郎さんに戻って…もちろん嬉しいです。でも…私、もっと10歳の杏寿郎さんを…甘やかしてあげたかったんです。今日、朝稽古をしたら、2人で甘味を食べに行ったりお買い物に行ったり…そうしようと思ってたから」

自分の気持ちを抑えてしまう10歳の杏寿郎さんを引っ張り出して、2人でただただ楽しく時間を過ごそうと思っていた。杏寿郎さんが元に戻ったことは心から嬉しい。けれども、それだけがどこか心残りだった。

そんな私を




「俺はもう、充分すずねに甘やかしてもらった」




杏寿郎さんがギュッと強く抱きしめる。



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