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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】


だから私は、自ら隠していた事実を明るみにすることにした。


「それならば問題ありませんね。だって、私と杏寿郎さんは結婚を約束した恋人同士ですから」


「…っ結婚を約束した…恋人同士…?」


私が告げたその事実に、10歳の杏寿郎さんはひどく驚いていた。


まぁ当然の反応だよね。


音柱様に口止めをしておいて、自らそれを告げるとは我ながら酷いなと思ったが、それ以外に私から離れようとする杏寿郎さんを引き止める術が見つからなかったので致し方ない。


「そう。いつもね、一緒に寝るときはこうやって杏寿郎さんとくっついて寝ていたの。だから寂しくって。杏寿郎くんが、こうしてくっついてくれてると…よく眠れそうなんだけどな?」


そう言いながら、背後から10歳の杏寿郎さんの小さな身体を

キュッ

と軽く抱きしめた。

すると杏寿郎さんの身体にグッと力が入ったが、私が優しくお腹をポンポンと一定の調子で優しく叩き始めると段々とその力も抜けて行った。

しばらく沈黙が続いた後、

「20歳の俺とすずねさんは、本当にこんなふうに寝ているんですか?」

10歳の杏寿郎さんが小さな声で私に尋ねる。

「…そうだよ。でも、20歳の杏寿郎さんは、私よりも全然大きいから、普段は逆なんだけどね。だからなんだか今日はとっても新鮮な気持ちなんです。こうして杏寿郎さんを抱きしめられるなんて…凄く嬉しいです」

私がそう言うと、

「…俺は、20歳の自分が羨ましい」

「…え?」

「俺も早く大きくなって、すずねさんを抱きしめられるくらい大きな身体になりたいです」

と、少しの迷いも感じない声でそう言った。

その言葉に、


キュンっ


と私の心が大きな音を立てる。


「はい!なれますよ。絶対に。私も…その日が来るのを、楽しみにしています」


ここにいる10歳の杏寿郎さんは、20歳の杏寿郎さんが若返ってしまった姿であって、10歳の杏寿郎さんが別の世界線からここに迷い込んできたわけではない。だからきっと、私を抱きしめられるくらい大きくなる日が来たとしても、20歳の杏寿郎さんのように今ここにいる私を抱きしめられるわけではない。

それでも、

「ずっと、その日が来るのを待ってますから。…早く、大きくなって下さいね」

そう言わずにはいられなかった。

「…っはい」

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