第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】
少し離れていたベッドを私がぴったりとくっつけると、10歳の杏寿郎さんはほんの少し恥ずかしそうな顔を浮かべながらも、喜んでいる様子だった。
私から積極的に行くくらいじゃなきゃ、きっと杏寿郎さんは甘えてはくれないもんね。
そんなことを思いながら
「じゃあ、電気を消しますよー!お布団に入ってくださーい!」
と少し戯けて私が言うと、
「入ります!入りますので少し待ってください!」
とバタバタと杏寿郎さんはお布団に入って行った。そんな子どもらしい姿に、私にかなり心を開いてくれているのを感じることができて、
「ふふっ…かわいい」
と思わず口に出してしまう。
「っ!俺は可愛くありません!10歳の立派な男です!」
「ふふっ…そうですよね!すみません」
顔を赤くして言う姿が、またなんとも可愛かった。
夜中にふと目が覚めると、
「父上…千寿郎………母上…」
そう小さな声でつぶやく声が耳に届き、私の意識は急激に浮上した。
「…杏寿郎くん?」
私がそう声をかけると、私に背を向けていた小さなその身体がピクリとほんの少し動く。
「杏寿郎くん?眠れないの?」
寝たふりをしているのか、そう声をかけても、杏寿郎さんは返事もしなければ、先ほどのように反応も示さない。
…夢見でも悪かったのかな?
それとも…初めから眠れなかったのかな?
「杏寿郎くん」
もう一度声をかけてみるも、やはり反応はしてくれない。
その後ろ姿が、とても不安気で、そして寂しそうで
ギシッ
「…っ!」
私は自分の布団を抜け出し、杏寿郎さんの布団へといそいそと侵入した。
「…すずねさん!何をしているんですか!?」
「あ、やっぱり起きてるじゃない。狸寝入りなんて、ダメですよ」
驚き慌てる杏寿郎さんを無視し、私がそう言うと、
「…っ婚姻を結ぶ前の男女が、同じ布団に入るべきではありません!父上や母上に叱られてしまいます!」
と大きな声で言った。
成る程そう来たか。
10歳の杏寿郎さんが言っていることは最もだし、自分でも少しやりすぎたかな?とも思う部分もある。それでも、それ以上に、どうしてもその寂しそうな背中を放っておくことができなかった。