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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】


「ごめん。杏寿郎くん。やっぱりね、私、1人で寝るのが凄く寂しくて…一緒に寝てもらえないかな?」

最初から、こう聞いてあげるべきだったんだ。

「…っはい!すずねさんが寂しいのであれば、俺と…俺が一緒に寝てあげます!安心してください!」

そう言う10歳の杏寿郎さんは、とても嬉しそうで、やはりさっきのあの様子は、


"一緒に寝てほしいけどそう言えない。言うべきじゃない"


と思っていた顔なんだなと思った。そして、私のこの"私が寂しいから"というお願いの仕方が、強くあろうとする10歳の杏寿郎さんにとって1番受け入れやすいお願いの仕方なんだろうなという結論に至った。

「ありがとう。杏寿郎くんがいてくれると、すごく心強いよ。じゃあ、そっちの部屋で一緒に寝させてね」

「はい!」


10歳の少年が、誰も知り合いのいない、知らない場所で、1人で寝れるかどうかなんて、そんなのは最初から答えは分かりきっている。聞くまでもなく、そんなのは無理で、そしてきっと普通の10歳の少年であれば、"無理"だとなんの躊躇もなく言える。それが普通のことだ。でも、杏寿郎さんは、10歳の少年だからと言ってそんなことは言えない。



代々炎柱を輩出する
鬼狩りの名家の嫡男だから。
亡き母に後を託されたから。
幼い弟を守る兄だから。



でも、私にとって杏寿郎さんはそのどれにも当てはまらなくて、ただの20歳の私が心から愛するたった1人の人だ。そして今目の前にいるのも、今は10歳になってしまっているが、同じく心から愛する、"煉獄杏寿郎"というたった1人の人。



今この時だけでもいい。
元の20歳の杏寿郎さんに戻った時に
忘れてしまっていていい。
目の前にいる10歳の杏寿郎さんが
心から安心して眠りにつける。
私がそんな場所になろう。



「じゃあ、明日は一緒に朝稽古をするために、今日はもう寝ようか」

私がそう笑かけると、

「朝稽古を付けてもらえるんですか!嬉しいです!今すぐ布団に入ります!」

10歳の杏寿郎さんは、満面の笑みを浮かべながらそう言った。


かわいい。
そして…愛おしい!


後何日、10歳の杏寿郎さんと一緒に過ごせるかはわからない。だけど、残りの時間、10歳の杏寿郎さんをたくさんたくさん甘やかしてあげたいと、心からそう思った。




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