第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】
「…っすずねさんから離れて下さい!」
10歳の杏寿郎さんがそう声を張り上げながらこちらに近づいてくると、
「はっはっは!やっぱ俺、あいつのこと心底好きだわ!」
音柱様はそういうや否やパッとそこから縁側へと移動し、
「じゃあな。そんな目ぇする位なら、派手にさっさと元の身体に戻ることだな」
と言って蝶屋敷の中へと消えて行った。
…音柱様は…一体何をしに来たんだろう?
そう思いながらその小さくなって行く音柱様の背中を見つめていると、
「…っすずねさん!大丈夫でしたか?」
と10歳の杏寿郎さんが私に走り寄って来た。音柱様の背中を見ていた視線を杏寿郎さんに移すと、先ほどの"嫉妬の気配"を孕んだ視線から、音柱様が現れるまでのものと同じ目に戻っていた。
「うん。大丈夫だよ。なんか…騒がせちゃったみたいでごめんね」
なんと言ったらいいかわからず、何故か謝ってしまう私に
「いいえ!俺は平気です!俺の方こそ…すみません。すずねさんが困っているように見えたのでつい…」
杏寿郎さんは眉を下げ、若干目線を下げながらそう言った。
「そうなの。すごく困ってたの。だからね、杏寿郎くんが音柱様の事を追っ払ってくれてすごく助かっちゃった」
上官に対してなんて失礼な言い草だろうか、と自分で思いつつも、音柱様よりもはるかに身体の小さな10歳の杏寿郎さんが、私が困ったいるように見えたからと音柱様に向かってくる様子はとても頼もしかった。
それに、
嫉妬…か。
10歳の杏寿郎さんに垣間見えた、20歳の杏寿郎さんの片鱗がくすぐったく、嬉しくもあった。
「…それじゃあ、続きをしようか」
私がそう言って杏寿郎さんに笑いかけると、
「はい!」
杏寿郎さんも私に笑顔を向けてくれたのだった。