第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】
「あのですね、私は10歳の杏寿郎さんに、私と杏寿郎さんが恋仲とは話していないんです!お願いですから余計なことを言わないでくださいっ!」
と、音柱様の耳に口を寄せコソコソと話す。一応気を遣ってくれたと思われる音柱様も声を抑え、
「は?なんでんなことする必要があるんだよ?」
と怪訝そうな顔をしている。
「だって、杏寿郎さんはまだ10歳ですよ?恋仲なんて言ったら、驚いちゃうだろうし、余計な気を遣ってしまうかも知れませんよね?取り敢えずただの師弟関係ってことにしているので、話を合わせて下さい」
「成る程ねぇ…だがなぁ。見てみろよ」
「…見てみろって…何をです?」
そう言いながら私が首を傾げると、
「あいつ、煉獄の目、見てみろって」
音柱様が視線を杏寿郎さんの方に向けながらそう言った。私はいまいち音柱の意図することがよくわからず、
一体なんなの?
と思いながらも10歳の杏寿郎さんの方へと視線を向けた。
杏寿郎さんはじっと、こちらを…いいや、音柱様のことをジッと静かに見つめていた。
「あの目、わかるだろう?」
「…わかるって、何がです?」
私がそう言いながら斜め上にある音柱様の顔を見上げると、
「お前、案外鈍いのな」
と"呆れた"と言わんばかりの顔で言った。
鈍い?私が?
「私は鈍くありません。どちらかと言えば、鋭いと言われる方です」
「何処がだよ。あの目はなぁ、誰が見たって"嫉妬"してる目だろうがよ」
「…嫉妬…?」
私は音柱様の言葉に、思わず再び10歳の杏寿郎さんの方をパッと見る。
すると、
パチッ
と私と、10歳の杏寿郎さんの視線がかち合った。
その目は、いつも私が見ている20歳の杏寿郎さんの目と同じ力強さを感じ、そこだけ見ると杏寿郎さんが10歳若返ってしまっていることを忘れてしまいそうになるほどだった。
「な?"俺の女に触るな"。あの目は確実にそう言ってる目だ。10歳も若返っちまってお前と恋仲だって記憶もない癖に…本能は自分の女ってことを覚えてるのかねぇ。お熱いこったぁ」
とわざと私の耳に口を寄せ、そう言った。
ボッ
と私の頬が急激に熱を帯びる。もちろんそれは、音柱様が私の耳に口を寄せて来たからではなく、10歳の杏寿郎さんの"嫉妬心"に、私も気がついてしまったからである。