第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】
その時、
「柏木じゃねえか」
背後から聞き覚えのある声がし、私はゆっくりとそちらを振り返った。振り向いたその先には、私の予想していた通り
「お久しぶりです、音柱様」
杏寿郎さんと同じ柱であられる宇髄天元様のお姿があった。私はその時、咄嗟に、10歳の杏寿郎さんを背中で守るように隠してしまった(自分でも、どうしてそのような行動に出たのかいまいちわからない)。
そんな私の不審な行動に、柱であり、元忍だと言う音柱様が気が付かないはずもなく、
「お前なに背中に隠してんだよ。ていうか、隠れ切ってねぇし。ほとんど見えてるし」
「…申し訳ありません…条件反射で…」
「テメェどう言う意味だ」
当然のようにバレてしまう。
なんとなく。なんとなくだが、音柱様に、杏寿郎さんが血鬼術にかかり、10歳の姿になってしまっていることが知られるのが憚れた。
この状況をどうしようかと思案している間に、
「…あれ?」
目の前に音柱様の姿がなくなっていて
「やっぱり。煉獄の弟じゃん。こんなところで、何やってんだよ。煉獄は一緒じゃねぇのか?」
気づくと杏寿郎さんの隣に立っていた。
いつの間に。流石元忍。っとそんな事考えてる場合じゃない。
「…実はですね…」
ここまできたら誤魔化しようもないので、私は仕方なく事のあらましを音柱様にお話しすることにした。
「てことはなんだ?ここにいるこいつは煉獄の弟じゃなくて、血鬼術で派手に10歳も若返っちまった煉獄本人ってことか?」
「そう言うことですね」
「ふーん…」
なんだ、思ったより普通の反応でよかった。
と、私がホッと安心していると、
「…っはっはっはっは!ダッセーなぁ!地味に、いや派手にダッセーなぁ!」
そう言って、音柱様はお腹を抱え笑出した。
そうだ。私、こうなる気がしたんだ。だから咄嗟に10歳の杏寿郎さんを背中に隠そうと思ったんだ。
今更ながら、先程自分が取った行動の意味に納得がいく。
10歳の杏寿郎さんは、自分のことを笑われているのがわかったのか、表情は変わらないものの、木刀を握る手にギュッと力が篭ったようだ。