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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】


20歳の杏寿郎さんの話ですっかり盛り上がってしまった私と10歳の杏寿郎さんは(愛する恋人の話であれば、どれだけ話したって話し足りないのは当然のことだと思う)、アオイさんが

"朝食の準備ができているのでそろそろ部屋に来てください"

とほんのり眉を吊り上げなら呼びに来るまで話に夢中になっていた。














朝食を食べ終えた私と10歳の杏寿郎さんは、お腹が落ち着くのを待ち、蝶屋敷の中庭を借りて稽古を始めた。

「うん!そうそう!強く振り下ろすんじゃなくって…そう!そんな感じ」 

杏寿郎さんに教えてきてもらった事を杏寿郎さんに教える…なんとも奇妙な状況である。

けれども、

「すずねさんが付けてくれる稽古は、父上が付けてくれたものとそっくりです!」

そう言って目を輝かせる10歳の杏寿郎さんの姿に、

「…ふふっ。それは多分ね、杏寿郎さんが槇寿郎様に付けてもらった稽古を、きちんと覚えていて、それを私に付けてくれていたからだね」

私は嬉しいやら、切ないやら、色んな感情でごちゃ混ぜになっていた。


杏寿郎さんはこうやって、槇寿郎様につけてもらっていた稽古を思い出しながら、任務に向かうその背中を見て、ずっとひとりで…頑張り続けていたのかな。





寂しくても、悲しくても
前に進むしかなくて。
辛くても、泣きたくても
逃げ出すなんて選択肢は
初めからなくて。
寂しいよって
甘える場所もなくて。
たったひとりで
傷ついた心を
叩いて叩いて強くして、
いつもみたいに
きゅっと口角を上げて
時には大きな声で笑って
色んなものを吹き飛ばしてきたんだろうな。






私が側にいられれば良かったのに。





そんな、考えたってどうしょうもない事で頭が埋め尽くされそうだった。



「…すずねさん?どこか…痛いんですか?」

気づくと私は、眉間に皺を寄せ杏寿郎さんを見つめていた。そんな私を、10歳の、普通ならまだ母親に甘えたい年頃の杏寿郎さんが、心配そうに覗き込んでいる。

「…うぅん…なんでもないの!ちょっと…お腹すいちゃってね」

「すずねさんは強いだけあって食欲も凄いんですね!俺もすずねさんを見習ってもっとたくさん食べます!」

私の下手な嘘も、こうして真に受けてしまう杏寿郎さんは、年相応に見えた。

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