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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】


その後私と杏寿郎さんは、アオイさんから分けてもらったみたらし団子と、10歳の少年が飲むのには些か苦すぎるのでは?と思ってしまうようなお茶を飲み(若干顔を顰めた10歳の杏寿郎さんに、私の正常な思考がまた奪われそうになったのは言うまでもない)、その間杏寿郎さんは、私に10年後の自分のことをたくさん尋ねてきた。その中でも、



「それじゃあ俺は、母上との約束通り、責務を全う出来ているのですね…!」


そう、伏し目がちに、噛み締めるように言った杏寿郎さんの表情が私の頭にこびりついて離れてくれない。


10歳の杏寿郎さんが…どんな気持ちでその言葉を言ったんだろう。


10歳で母親を病で亡くしたと言うだけで、どれほど心が潰れてしまいそうなほど辛かったかは、同じく母親を病でなくした私には想像に難しくない。けれども、私には、その時一緒に悲しみ、支え合った、"父親"という存在がいた。



杏寿郎さんは…違ったんだよね。



以前杏寿郎さんから聞いた話では、槇寿郎様は瑠火さんが亡くなってすぐ、稽古をつけてくれなくなり、酒をたくさん飲むようになり、部屋に篭りがちになったと言う。当時の杏寿郎さんと千寿郎さんは、槇寿郎様がたった数人だけ残した女中さんに手伝ってもらいながら、可能なことは自分達でやり、瑠火様を亡くして寂しがる千寿郎さんを杏寿郎さん一人で励まし続けたのだという。杏寿郎さんは、その事をまるでなんでもないことのように話しており


"それも今となってはいい思い出だ!"


なんて言いながら笑っていたが、実際にこうして10歳の杏寿郎さんを目の前にしてその話を思い出すと、私はどうしようもないほどに胸がギュッと締め付けられた。


兎に角10歳の杏寿郎さんが私に聞くのは、20歳の柱になった自分がどうやって鬼と戦っているのかだとか、いくつの型を使えるようになっているのかだとか、千寿郎さんはどんな風に成長しているのだとか、そんなことばかり。もちろん私は聞かれたことには全てきちんと答えたし、"20歳の炎柱杏寿郎さん"が本当に強くて素敵な人だとしつこい程に伝えた。

それを聞いた杏寿郎さんの顔はとても誇らしげで、やはりとても可愛かった。けれども私は、10歳の杏寿郎さんと話せば話す程、それに伴うように自分の心の奥底に段々と、ズッシリ重たいものがたまって行くようだった。



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