• テキストサイズ

鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】


「杏寿郎さんは奥にいるってアオイさんが言っていたんですが…どこの部屋ですか?」

「今は縁側で日光浴をしてもらっています」

しのぶさんの言葉に私はスッと椅子から立ち上がる。

「わかりました。杏寿郎さんの事は、私にお任せください」

私がそう言うと、しのぶさんはニコリと優しい笑みを浮かべ

「すずねさんなら、そう言って下さると思っていました。もし、10歳の煉獄さんをお家に連れ帰るのに抵抗があれば、元に戻るまでここにいて頂いて構いませんが…どうされます?」


頭に浮かぶのは心配そうに眉を下げこちらを見る千寿郎さんの顔と、眉を顰めこちらを睨みつける槇寿郎様のお顔。


千寿郎さんはともかく…槇寿郎様にはあまり…会わせたくないな。よし。千寿郎さんには、緊急の任務が入ったって鴉を飛ばして、杏寿郎さんが元に戻るまでここで様子を見させてもらおう。


そう結論づけた私は、

「悪いんですが…杏寿郎さんが元に戻るまで、蝶屋敷にいさせて下さい」

そう言ってしのぶさんに頭を下げた。

「わかりました。それでは、部屋の準備ができたらこちらから声をお掛けしますので、しばらくお待ちください」

「よろしくお願いします」

しのぶさんにそう告げ、私は10歳の杏寿郎さんがいると言う縁側へと急ぎ向かった。


















「…いた…」


杏寿郎さんと初めてきちんと顔を合わせた縁側に行くと、面影はあるけれども、髪の短い、私が知っている背中よりも遥かに小さいそれがそこにあった。その背中はピンと伸びており、正座をし、中庭をジッと見つめているようだ。


「……杏寿郎…くん」


なんて声をかければ良いか、一瞬悩んだ。けれども、今はすっかり幼くなってしまった10歳の杏寿郎さんを"杏寿郎さん"と呼ぶのもおかしい気がして、結局"杏寿郎くん"という呼び方を選ばせてもらった。


「……はい!」


今の杏寿郎さんにとって、私の声が誰のものかなんてわかりっこないのに、はっきりと、まだ声変わり前の少年の声で返事をしながらこちらを振り返ってくれた。


…っやだ……かわいい!


先程も言ったが、不謹慎だと言う自覚はある。けれども、血鬼術で10歳になった杏寿郎さんのお姿は、杏寿郎さんを心から愛する恋人の私としては、可愛いと思わない、と言う方が到底無理な話である。

/ 898ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp