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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第17章 お金が欲しかっただけなのに気がついたら君主の寵愛を受けていた


せっかく掴んだ高給な仕事。逃すわけにはいかない。だって…

「私には結婚を約束した恋人がおります。父が残した借金を完済し、母が安心して生活できる基盤が出来るまで待って欲しいと、私からお願いしております。それ叶えるためにもどうか…どうかこの私を侍女としてお使いください!」

そう言いながらスルタン様に向かい、深く深く首を垂れた。

同情をかうような卑怯な言い方だなと自分でも思う。けれども、絶対に、何が何でも、この天から降って来たようなチャンスを失うわけにはいかないのだ。







しばらくの沈黙の後、

「わかった」

その言葉に、私は深くさげていた頭をパッと上げる。

「…っでは…!」

「だが少しでも俺が気になるそぶりを見つけた日には、そくここを去ってもらう」

「っはい!必ずやスルタン様にお認めいただけるような侍女となります。よろしくお願いいたします!」

こうしてこの日から私は、スルタン様、もとい、杏寿郎様の侍女としての日々を送ることとなった。






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「杏寿郎様」

「なんだ」

「チキンスープ…具がこんなにも残っております。もう召し上がらないのですか?」

私の目の前にあるのは、見るからに高価なスープ皿に悲しげに残されたチキンの、いわゆる手羽という部分。

「それはスープの残骸だろう?食べるものではない」

その言葉に、元超ど貧乏、現ど貧乏の私の心に火がついた。


「…っ何を仰いますか!」


珍しく声を荒げる私に、杏寿郎様(スルタン様とお呼びしていたが、鬱陶しいと言われ辞めた)が目を見開きこちらを見る。

「この、美味しい部位が、出汁をとったら用無しだと、そう仰るのですか!?女の身体を好きなように抱き、己が満足をしたらそのままポイ捨てする、血も涙もない男のように…この美味しいお肉を捨てると、そう仰るのですか!?」

「…それは関係ないだろう」

そう言いながら杏寿郎様は、面倒くさいと言わんばかりの視線を私に寄越す。

「いいえ!大いに関係あります!美味しいスープとお野菜、香辛料で煮込まれたチキン!捨てるなんて……もったいないです!」

「お前が言いたかったのはそこだろう。前置きが長い!」



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