第16章 心を込めたお祝いをあなたに【暖和】【煉獄さんお誕生日】
「改めまして、杏寿郎さん。少し早いですがお誕生日おめでとうございます!」
そう言いながら、火の着いた数字のロウソクが2本刺さったタルトを杏寿郎さんの前に置く。
「ありがとう。…すずねにそう言ってもらえる日が来たことが、俺は心から嬉しい」
ロウソクを見つめ、ほんのりと目を細めながらそう言う杏寿郎さんに
あぁ…杏寿郎さんも、私と同じ気持ちなんだ。
と、胸の奥がギュッと締め付けられた。
「ロウソク…消してください」
「うむ!」
杏寿郎さんはそう答えると
ふーっ
とロウソクの火を吹き消した。
私は、その火が消えたのとほぼ同時に
ドンッ
と勢いよく杏寿郎さんに抱きつく。
杏寿郎さんは、突然私が抱きついたのにも関わらず、ほとんどよろけることなく、私の身体を力強く、そして優しく受け止めた。
「どうした?」
その声も酷く優しくて、何故だか泣きたくなった。
「…杏寿郎さん」
「ん?」
「生まれてきてくれて…生まれ変わってくれて…私を見つけてくれて…ありがとう。好きです。大好きです。ずっと、来年も、再来年も、こうしてお祝をさせてください」
そう言いながら、お互いの身体の隙間を埋めるように抱きつく私を、杏寿郎さんは右腕でギュッと強く抱き返し、左手で頭を優しく撫でる。
「あぁ。来年も、再来年も、その先もずっとだな!俺もすずねに誕生日を祝ってもらいたい」
「…はい…絶対に」
今度は、絶対に、何があっても離れない。
私は杏寿郎さんの身体に回していた腕を外し、ほんの少し杏寿郎さんから身体を離す。そして空いた手で杏寿郎さんの両頬を優しく掴み、顔を近づけ
ちぅっ
自らその唇に口づける。
そんな私に応えてくれるかのように、杏寿郎さんは先程よりもさらに強く私の身体を抱きしめてくれた。