第16章 心を込めたお祝いをあなたに【暖和】【煉獄さんお誕生日】
その行動が嬉しくて、私は杏寿郎さんの頭に自分のそれを擦り付けるようにグリグリと動かす。
「ご飯中にこんなこと…槇寿郎様と瑠火様が見たら怒られちゃいますね」
「そうだな。だが安心すると良い。ここにはすずねと俺の2人きりだ!」
さも大発見という感じで言う杏寿郎さんが面白くて、私は自然と笑い出してしまう。
「ふふっ。そうですね。…続き、食べましょうか。お誕生日のケーキも買ってあるんですよ!」
「よもや!それは嬉しい!ではカレーのお代わりは我慢して、すずねと共にケーキを食べる事にしよう」
くっつけていた頭を離し、杏寿郎さんは再びスプーンを手に取ると、お皿にまだ残っているカレーを再び食べ始めた。
「ケーキは食後すぐに食べます?それともお風呂に入ってからワインと一緒に食べますか?あ、たまには杏寿郎さんと一緒に飲みたいと思って、私の好きな甘い白ワインを買ってしまったんですけど…」
「あの葡萄のいい香りがするワインだな!ならば風呂に入ってからにしよう!プレゼントもその時に開けたいと思っているのだがいいだろうか?」
「はい!もちろんです!じゃあ私、先に洗い物をしてしまいますね」
「すまないが頼む」
名残惜しと思いながらも杏寿郎さんの隣から立ち上がり、私は食べ終えた自分のお皿と、カプレーゼがのっていたお皿をシンクまで持っていき洗い物を開始した。
「杏寿郎さん。入ってきても良いですよー」
「わかった!すぐに行く!」
"誕生日祝いの一環としてすずねと一緒に風呂に入りたい"
愛してやまない夫に、背後から抱きしめられながら耳元でそう囁かれ、断れる人がこの世の中に果たしているのだろうか(お皿を洗っていた私は、杏寿郎さんのその行動に危うくお皿を割りそうになってしまったが)。
杏寿郎さんが後から入ってくることを条件に、私はその願い入れを受け入れ、今は乳白色の入浴剤を入れた湯船に浸かりながら杏寿郎さんが入ってくるのを待っていた。これならじっくり身体を見られる心配はないし、電気も脱衣所の間接的な明かりしかないので安心だ。
ガチャッ
「待たせてすまない」
「いいえ全然平気です」
杏寿郎さんはそういうと、シャワーで髪を濡らし、清涼感のあるメンソールのシャンプーで頭を洗い始めた。