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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第16章 心を込めたお祝いをあなたに【暖和】【煉獄さんお誕生日】


カレー鍋の火を少し強め、お味噌汁も沸騰しないように気をつけながら温めていく。その間に、除菌シートを1枚取り出し、リビングテーブルを拭こうと、キッチンからそちらに移動すると、いつのまにか来ていたのか杏寿郎さんの姿がそこにあった。

「すずねも今日は仕事だった筈だろう?仕事の日にカレーを作るのは珍しいな」

着替えながらリビングに来たのだろう。杏寿郎さんは私と色違いで買った部屋着の上着に袖を通し、首を傾げながら言った。

「実は…午後、お休みを頂いたんです」

「休み?そんなこと今朝は言ってなかっただろう?」

そう問われてしまえば答えざるを得ず、

「…っちょっと待っていて下さい」

サプライズとまでは思っていなかったが、杏寿郎さんを驚かそうと思い今日のことを黙っていた私は、棚に見つからないようにしまっていた杏寿郎さんへのプレゼントを急いで取り出した。









綺麗に包装された箱を手に持ち、パタパタと杏寿郎さんの前まで戻り、私はじっと杏寿郎さんを見上げる。

「少し早いですが…杏寿郎さん。お誕生日おめでとうございます。これ、私からのお誕生日プレゼントです」

そう言いながら、杏寿郎さんに向かい両手で持った箱を差し出す。

杏寿郎さんはその綺麗な瞳を一瞬パッと見開いた後、眉を下げ、優しく目を細め、

「…そういうことか。ありがとう。すずねから言われるその言葉は、他の誰から言われるそれよりも嬉しい」

そう言って、私の手から箱を受け取る。

「ふふっ。少し大袈裟じゃありませんか?」

「そんなことはない!」

声のボリュームを上げながらそう言う杏寿郎さんは、毎日格好良く仕方がない、と思っているのにも関わらず、それと同じくらい可愛いとも思えた。

「ありがとうございます」

眉を下げ、ほんの少し幼げな笑顔を浮かべ箱を眺める杏寿郎さんの顔を、私もじっと眺める。


好き。
大好き。


自分の身体中から、杏寿郎さんへ"愛おしい"という気持ちが溢れ出てきてしまいそうだった。

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