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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第16章 心を込めたお祝いをあなたに【暖和】【煉獄さんお誕生日】


杏寿郎さんはこのマンションに帰ってくる金曜日は、いつも可能な限り早めに仕事を切り上げて帰ってきてくれていた。その代わり仕事を持ち帰ってくることもあったが、私は同じ空間に杏寿郎さんがいてくれれば、例え仕事をしていて構ってもらえなかったとしてもそれでよかった。


テスト前でもないし…連休中にポツンとある平日だから、そんなに仕事は詰め込まないとは思うんだけど。


そう思いながらも、万が一何かあって遅くなったらと心配になる。

けれども、10分もしない内に、

「7時頃には帰れるはず」

と杏寿郎さんから返事が送られてきたので、私は

「やった!」

と再び独り言を言ってしまうのだった。













杏寿郎さんから

"今から帰ると"

連絡が来てから30分程経過した頃、

ガチャリ

とドアが開閉する音が聞こえ、私はカレーの鍋を混ぜていた手を止め、火を弱火にし、急ぎ玄関へと走った。


「杏寿郎さん!おかえりなさい!」

「すずね!ただいま」


ギュッと杏寿郎さんに抱きつき、大好きな杏寿郎さんの温もりと、匂いを堪能する。それだけで、自分は世界で1番幸せなんじゃないかと、そんなふうに思えてしまうから不思議だ。

「カレーの良い匂いがするな」

そう言って私を抱き返しながらもほんの少しソワソワし出す杏寿郎さんは、きっととてもお腹が空いているのだろう。そんな可愛らしい様子に私からは自然と笑みが溢れてしまう。

「はい。今日のご飯は、杏寿郎さんが好きなサツマイモがたっぷり入ったカレーですよ」

そう言いながら斜め上にある杏寿郎さんの顔を見上げると、

「よもや!金曜の夜にあのカレーが食べられるとは!嬉しい予想外だ!」

満面の笑みを浮かべそう言った。そのまま杏寿郎さんが手に持っている仕事用の鞄を自然な動作で受け取り、

「すぐに盛り付けるので着替えて待っていてくださいね」

「わかった」

靴を脱いでいる杏寿郎さんよりも先に歩き出し、寝室兼杏寿郎さんの仕事用スペースとして利用している部屋に鞄を置くと、急ぎ台所へと戻った。


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