第16章 心を込めたお祝いをあなたに【暖和】【煉獄さんお誕生日】
ビール…は確か前に買ったものがまだ冷蔵庫に入っていたはず。今日は私も一緒に飲みたいし、あの甘い白ワインにしようかな。
そう思い、北国の地名が書いてある、深緑色のビンの白ワインをカゴに入れた。
そのままレジに向かい、お会計をすませ、荷物が思ったよりも多くなってしまったので、それを置くために一旦車へと戻った。
次に、
ケーキを取りに行かなくちゃ。
このデパートに入っている、タルトがものすごく美味しいと口コミにあったケーキ屋さんに、予約していたフルーツタルトを取りに向かった。
ケーキ屋さんに到着し、ふとショーケースを覗いてみると、そこには美味しそうなスイートポテトが並んでいる。それがものすごく、私の目を引いた。
「いらっしゃいませ。お決まりになりましたらお声をおかけください」
「あの、電話でタルトを予約しました煉獄なんですけれども」
「煉獄様ですね。お待ちしておりました。少々お待ちくださいませ」
そう言って、いったん裏に下がっていった可愛らしい店員さんの背中を見送り、
「…杏寿郎さん…喜びそう」
タルト以外は買うつもりはなかったのだが、美味しそうなスイートポテトを目の前にすると、杏寿郎さんが喜んでくれるのではないかと思い、どうにも買わないと言う選択肢は選べそうになかった。
「お待たせしました。こちらでよろしかったでしょうか?」
店員さんがそう言って見せてくれたのは、たくさんのフルーツがのせられ、見ているだけで明るい気持ちになってしまいそうな程美味しそうなタルト。
「はい!」
杏寿郎さんの誕生日のために注文したフルーツタルトだが、あまりの美味しそうなその見た目に、
早く食べたい
とそう思ってしまう自分がいた。
「お誕生日のプレートはこちらでお間違いありませんでしょうか?」
あまりのケーキの煌びやかさに、すっかり見落としてしまっていたが、店員さんの言葉にプレートの方に目を向けると、
"happy birth day 杏寿郎さん"
とチョコペンでとても綺麗に書かれていた。