第16章 心を込めたお祝いをあなたに【暖和】【煉獄さんお誕生日】
午後の休憩時間を利用し、指輪を買ったときに頂いた名刺に載っている番号に電話を掛けると
"うちではボールペンは取り扱ってないのですが、取り扱っている知人の店があります。そこをご紹介させて頂くことは可能です"
とのお言葉を頂いたので、
"是非お願いします!"
とお願いをさせてもらった。
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仕事から帰り、手を洗うと、そのまま台所へと向かった。そこには目的の人物がおり、
「瑠火様」
私の呼び声に、
「なんですかすずねさん」
瑠火様は夕飯の準備の手は止めることなく、チラリと一瞬私に視線を寄越しながら答えてくれた。
「相談したいことがありまして、今少し大丈夫でしょうか」
「構いませんよ。あらかた準備は終えましたので」
そばに置いてあった布巾で手を拭き、瑠火様が私の方に身体を向けてくれる。
「ありがとうございます!それでですね、杏寿郎さんのお誕生日の件なんですが…当日のお夕飯、私にも作らせてもらいたいんです」
私のその言葉に、瑠火様は眉をピクリと動かした。その表情に、
あれ?私…何か変なこと言ったかな?
自分の発言を振り返ってみるが、思いあたることは特にない。
「すずねさん」
「はい」
「お忘れかもしれませんが、すずねさんと杏寿郎はまだ新婚と呼ばれるべき時期ですよね?」
"新婚"
「…はい…恐らくは…」
瑠火様の言わんとしていることがいまいちわからず、私の首が段々と右に傾いていく。
「折角の新婚期間です。別宅もあることですし、私たちとではなく、2人きりで過ごした方が良いのではないでしょうか?」
「…2人…きり…で?」
「はい」
成る程。それは考えていなかった。
「…で…でも、みんなに囲まれて賑やかな方が杏寿郎さんも嬉しいんじゃないかと思っているのですが」
私自身、槇寿郎様、瑠火様、そして千寿郎さんに囲まれ、幸せそうに笑っている杏寿郎さんを見ているのがとても嬉しくもあった。
「私はそうは思いません。杏寿郎は、すずねさんが好きでたまらないのです。2人きりで、ゆっくりと過ごしたいと考えているのではないかと」
「…そうなのでしょうか」