第16章 心を込めたお祝いをあなたに【暖和】【煉獄さんお誕生日】
もうすぐ結婚して初めて迎える、愛する杏寿郎さんのお誕生日。私は2ヶ月前からずっと、何をプレゼントしたら喜んでくれるかを考えていた。
どうせなら杏寿郎さんが欲しいと思うものを、と思いさりげなく欲しいもの、必要なものを聞こうとしても
"すずねは何か欲しいものはないのか?"
と毎回の如く、私が何が欲しいかという話題にすり替わってしまうため、杏寿郎さん本人から聞き出すのを諦めた。それならばと瑠火様、千寿郎さん、槇寿郎様、カナエさん、不死川さん等知っていそうな人に聞いたものの、あまり有力な情報は得られず、宇髄さんに至っては
"お前が裸にリボンでもつければ喜ぶんじゃねぇの?"
とふざけた答えが返ってきたので、失礼かと思ったが、そのままメッセージを既読無視をさせてもらった。
結果的に私は、
愛してやまない杏寿郎さんの誕生日。誰かに相談するのではなく、自分で考え決めるべきだ。
という結論に至った。
インターネットや雑誌を読み漁り、悩みに悩んでようやく決まったプレゼントは
"名前入りボールペン"
だ。杏寿郎さんが普段学校で使っているのは、所謂使いやすさ重視の多機能ボールペン。赤、黒、青、そしてシャープペンシルの4機能を兼ね備えたもの。私もそれと同じものを職場で使っているので、使いやすさに関しては十分理解はしている。けれども、なんとなくそれをプレゼントしたいと思った。
ボールペン…自分ではわざわざ高いものを買おうとは思わないし、名前入りって特別感がある気がする。それに…学校に居る間、私があげたペンを見るたびに、私のことを思い出してくれるかも…。
我ながらつまらない独占欲だな、とは思う。けれども、結婚したからと言って杏寿郎さんのファンが減ったわけでもないし、それでもいいと迫ってくる強者も中にはいるかもしれない。
やっぱり、名入りのボールペンが1番私の中でしっくりくる。よし、そうしよう。
インターネットを検索すると、ネット通販で海外のブランドの物だとか、老舗の物だとか色々候補は出てきた。けれども、どれもピンと来ず、どうしようかとパソコンのキーボードをパチパチしていて目に入ったのが、
「…指輪…」
自分の左薬指にはめられた結婚指輪だった。