第15章 誕生日の贈り物は【暖和】【煉獄さんお誕生日】※裏表現有
「…あの、私…まずは、謝らせてください」
「謝る?君は俺になにか謝らなくてはならないような隠し事でもあるのか?」
ほんの少し眉をひそめながらそう言う杏寿郎さんに焦りを覚え、私は慌てて
「…ち、違うんです!誤解しないでください!」
杏寿郎さんの右手を両手で掴みそう言った。
「誤解?ではなんだ?正直に言ってほしい」
「杏寿郎さん…今日お誕生日ですよね?実は…私、贈り物を…用意し損ねてしまったんです…」
「誕生日…贈り物…?」
杏寿郎さんはそう呟いた後、パッと目を見開き、先程までのほんの少し強張った表情からいつもの表情に戻る。
「…すっかり忘れていた。確かに今日は俺の誕生日だ。だが、贈り物など気にしなくていい。すずねが任務で忙しかったのも、休暇があっても俺との時間を優先してくれていたのも理解している。君が今こうして俺の隣にいてくれる。それだけで俺は充分だ」
眉を下げ、杏寿郎さんは微笑みながらそう言った。
「…全然よくありません。私と杏寿郎さんが恋仲になって…初めての誕生日ですよ?贈り物をして、きちんとお祝いしたかったのに…っ!」
「だからその気持ちだけで充ぶ「全然たりないんです…っ!」」
緊張と興奮で声が大きくなってしまい、私は慌てて"すみません"と小声で謝る。
「…贈り物は…用意できませんでした。…だから…私が…っ…私に…させて欲しいことが…あるんです…っ!」
察しがいい杏寿郎さんだ。この状況と、ひどく緊張した私の様子から、もしかしたら私が何をしようとしているか気がついてしまっているかもしれない。
「すずねがそうしたいのであれば、俺はそれを甘んじて享受しよう!」
そう言って杏寿郎さんはニッコリと微笑み、布団にうつ伏せの姿勢になった。
「…あの、杏寿郎さん」
「む?なんだ?」
「その姿勢では…出来ないのです…が?」
私のその言葉に、杏寿郎さんはさも不思議そうな顔で私の顔を見上げる。その、私の顔を見上げる顔がなんとも可愛らしい。
「…?身体をほぐしてくれるのだろう?この姿勢以外にどんな姿勢をすれば良いんだ?」
「…っ…」
わかっていなかった。
いっそのこと、私が"ナニ"をしようとしているのか察してくれていた方が楽だった。
うぅん。そんなのは私の甘え!やるの!やるのよ私!