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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第14章 ファインダー越しじゃない貴方と✳︎煉獄さん


「柏木さん」

「…っはい…」

その手の熱に、目線に、声色に、私の心臓が大きく波打つ。

「あなたのことが好きです。俺の恋人になってはくれないだろうか?」

「…っ!」

嬉しくて、嬉しすぎて、何も言えなかった。

そんな私を煉獄さんは眉を下げ、初めて見る不安気な表情で見ている。

好きな人にそんな顔はして欲しくない。

「…っなります!お願いします!」

思いの外大きな声が出てしまい、一瞬焦りを感じるも、

「そうか!」

そう言って満面の笑みを浮かべる煉獄さんの顔を目の当たりにしてしまえば、そんなことはどうでも良くなってしまった。






けれども。





「若いって素敵ねぇ」





不意に耳に入っていたその年配の女性と思われる女性の声で、私は我に帰る。





ここ…校門の近く。
周り…人…たくさん。




その事実に気がついた瞬間

ぶわっ

と、顔どころか身体全体が熱くなり、なのにどこかヒヤリと感じるという変な感覚に陥った。




「…っあの…煉獄さん…」

「なんだ?」

煉獄さんはそのことに気がついているのか、はたまた全く気にしていないのかニコニコと嬉しそうな顔で私を見つめている。

「…周りに…ひ…人が…たくさん…」

「そうだな。だが俺は気にしない!」


いやいや。気にしないとダメでしょう。ましてやこの学園の教師なのに。教師が文化祭中に告白して(いやそもそも初めに告白したのは私だが)、その相手と校内で見つめ合いながら手を取り合ってるなんてダメでしょう。苦情ものでしょう。


脳内では雄弁に語っているものの、実際には私の口は上手く動いてくれなくて、口をぱくぱくと金魚のように動かすことしかできなかった。


その時、

「そこの歴史教師!勤務中に意中の相手に愛を告白するとはどういう了見だ!今すぐ職員室に来い!」

長髪を適当に纏めた、煉獄さんに負けず劣らず顔の整った男性が(よく見ると先ほど徒競走でともに走ったいた)、物凄い勢いでこちらに向かってくるのが見えた。

「しまった。冨岡先生だ」

成る程、あの人が冨岡先生か。

煉獄さんは冨岡先生の方にチラリと一度視線投げたあと、

「今夜会えないだろうか?」

再び私を見つめ問うた。

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