第14章 ファインダー越しじゃない貴方と✳︎煉獄さん
「…よかった…」
私はまだ、煉獄さんの事を好きでいていいんだ。
そう思うと同時に、私の心に甘やかな温かさが戻ってくるのを感じた。
「ちっともよくはない」
煉獄さんはじーっと私を見つめ、ほんの少しムッとした様子でそう言った。その言葉に、今度は私が首を傾げる。
「俺は今日、毎年負けていた宇髄と不死川に打ち勝ち、柏木さんに思いを告げようと心に決めていた。そのために毎日の筋トレも増やし、ランニングの距離も可能な限り延ばした」
「…っ!」
ボッと頬が熱くなり、私の手は嬉しさで小刻みに震えていた。
「ところがだ。せっかく勝負に勝ったというのに、俺が思いを告げる前にどういう訳か柏木さんに先に"好きだ"と言われてしまった。そして極め付けにはさようならと。予想外にも程がある」
「…っだって…女子生徒たちが、煉獄さんは甘露寺さんって人に告白するつもりだって話してたからてっきり…」
私のその言葉に、煉獄さんはキョトンと目を丸めた。
「何故俺が同僚の恋人に告白をするんだ?」
「いや、それを私に聞かれても」
「よもやそのよくわかりもしない話のせいで、俺の柏木さんへの告白は邪魔をされたと?」
「…私に…そう言われましても…」
矢継ぎ早に飛んでくる煉獄さんからの質問に、そしていつもより砕けた煉獄さんの喋り方に、私はもうタジタジだった。煉獄さんはと言えば、腕を組み"むぅ"と言いながら目を瞑り何かを考えているようだ。
パッと目を開き、再び私の目をじっと見つめると
「うむ。済んでしまったことを悔やんでも仕方ない!だから改めて、今からやり直させてもらおう!」
さも名案だと言わんばかりの顔で、にっこりと微笑みながらそう言った。
「…やり直す?」
パチパチと瞬きを繰り返しながら煉獄さんの顔を見ていると、煉獄さんが私の両手をその手で優しく握り、ジッと私の目を熱く見つめる。