第14章 ファインダー越しじゃない貴方と✳︎煉獄さん
「っ会えます!何時でも…少しでもいいので…会いたいです!」
「そうか!それは良かった!では時間が分かり次第メッセージを入れておこう」
「はい!待ってます!」
あの森林公園じゃ無い場所で煉獄さんに会える。
私にはその事実がたまらなく嬉しかった。
煉獄さんは再び冨岡先生の方をチラリと見遣った後、私の右耳に口を寄せ
「夜にまた、あなたに会えるのを楽しみにしている…すずねさん」
「…っ!」
私の下の名を初めて呼んだ。
名乗ったこと…一度しかないのにっ!
ピシリと固まる私を尻目に
「煉獄貴様!今すぐ離れろ!」
「わはは!ではまたな!」
煉獄さんは大きく手を振りながら
「待て!煉獄!」
冨岡先生とやらに追いかけられ、あっという間にその場からいなくなってしまった。
夢心地のまま1人その場に取り残された私は
"すごかったねぇ"
"あんなイケメンと付き合えるなんて羨ましい"
"あの人が煉獄先生の相手ぇ?"
コソコソと話す声が耳に入り、煉獄さんからの嬉しすぎるお誘いでまたしても忘れていた"ここが一体どこか"という重要なことを思い出し、
っもう恥ずかしくてこんなところいられない!
出来るだけ下を向き顔を隠しながら、キメツ学園の門を後にしたのだった。
「すずねさん!」
偶然を装って公園で待ち伏せする必要も、
後ろ姿をこっそり写真に収める必要も、
「…れんご…杏寿郎さん!」
もうない。
「待たせてしまいすまない。それにしても、あなたにそう呼ばれると、なんともくすぐったい!」
「…ふふっ。お腹空きましたね。何を食べに行きましょうか?」
「この近くに美味いラーメン屋が…いや、はじめてのすずねさんとの食事にラーメンは相応しくないな」
「私、ラーメン大好きです!ついでに餃子も食べられれば最高です!」
「わはは!そうか!じゃあそこに行こう!」
「はい!」
だって私たちは今日から"恋人"なのだから。
これからどんなあなたを
写真に収められるだろう。
どんな写真でも最高に素敵な事は
間違いないけどね。
-完-