第14章 ファインダー越しじゃない貴方と✳︎煉獄さん
グッと両手を握りしめ、この届くことのない恋心にお別れを告げるため、私はじっと煉獄さんを見つめる。
「…煉獄さん」
「はい」
さようなら、私の恋心。
「私、煉獄さんのことが好きです」
「…っ!?」
煉獄さんは私のその言葉に、目を見開きピシッと動きを止める。
「だからもう会えません。私は、煉獄さんとお友達として接することはできません。男の人として好きだから。写真はデータに落として、この学校のポストにでも入れておきます。短い間でしたが楽しかったです」
淡々とそう告げる私を、煉獄さんは瞬きひとつすることなくじっと見ていた。
「誘ってくれてありがどうございました。さような「ちょっと待ってくれ!」…っ!?」
キーン
鼓膜に響く程の大声に、私は咄嗟に両手で耳を塞ぎ、両目を瞑る。
煉獄さんの声…デカすぎない?
そう思いながらゆっくりと両目を開くと、
「…っ!?」
グッと近づけられた煉獄さんの顔で視界がいっぱいになった。周りからは女子生徒たちが、"きゃー!"と騒ぎ立てている声が聞こえる。
…え!?ちょっ…近すぎっ!
そのままグッと両手を掴まれ、煉獄さんはその端正な顔を私により近づける。女子生徒の叫び声はさらに大きくなるし、女子生徒だけではなく周りにいる人たちもどよめきだすし、私の頭は理解し難い煉獄さんの行動に混乱していた。
「あの…っ離して「柏木さん!俺は君の事が好きだ!」…へ?」
好き?煉獄さんが?私を?
私の頭はさらに混乱し、頭の中は疑問符でいっぱいになる。そんな私を置いてけぼりにし、煉獄さんは
「どうか俺の恋人になってはくれないだろうか!」
周りに沢山の人がいるのかも関わらず、私に向け、所謂愛の告白とやらを大声でぶちかました。
「…あの…」
「なんだ!?」
「…髪がピンクで、おっぱいが大きい、もんの凄い可愛い美大生とやらは…?」
私のその問いに、煉獄さんは首を右に傾げる。
「髪がピンク?甘露寺の事か?」
「…ピンクの髪の女性は珍しいので、おそらくその甘露寺さんかと」
「何故今甘露寺の名前が出るのか俺にはわからないが、彼女は俺の後輩で小芭内の恋人だ」
「…後輩…?」
「そうだ!」
煉獄さんとのやりとりを反芻し、私はようやく
…じゃあ…私の勘違いって事?
という考えに至る。