第14章 ファインダー越しじゃない貴方と✳︎煉獄さん
煉獄さんに案内され、テントが設置された"関係者用スペース"とやらの1番前の席に案内され、その席に
"煉獄予約席"
となんとも大袈裟な様子で張り紙がしてあり、大変恐縮したが、走っている姿を撮影するのには抜群のポジションだったので、甘んじてその予約席に座らせてもらうことにした。
"キメツ学園文化祭、目玉イベントの男性教師陣の徒競走が間もなく校庭で始まります。ご興味、関心あります方々は是非応援に駆けつけてくださいねぇ"
鈴のように可憐な声が校内に響き、その放送を合図にたくさんの生徒や一般客が校庭、または校舎の窓からこれから始まる徒競走が始まるのを楽しみにしている様子が伺えた。
そばにいた女生徒たちの
「ねぇねぇ!誰が1番になると思う?私はやっぱり宇髄先生だと思うなぁ」
「えぇ?体育教師だし冨岡先生でしょ?」
「私は断然、不死川先生派!」
「意外や意外、伊黒先生って線もあるんじゃない?」
「ちょっと!煉獄先生が1番に決まってるでしょ!?っていうかさ!煉獄先生のポニーテールめっちゃ格好良すぎ!去年より気合い入ってるよね?」
意中の相手の名前が登場し、そうよねそうよね、と思いながらも望遠レンズに付け替え、具合を見ようとカメラを覗き煉獄さん達が待機している方へとレンズを向けた。
よし、大丈夫そう。
そう思いながら望遠レンズ越しに煉獄先生を見ていると
「…っ…」
レンズ越しに目が合った気がし、もう今日何度目かわからない胸の高鳴りを感じた。
ダメダメ!もうすぐ始まるんだから!ちゃんと撮らないと!
そう自分に言い聞かせている間に、煉獄先生を含めた先生方がスタート地点に移動し、
"間も無くスタートです"
その言葉に、私は再びカメラを構えた。
"位置について。用意…"
パーン!
爽快さを感じるスタートピストルの音に、小柄な先生を除いた4人の先生方が一気にスタートを切った。
"伊黒先生ったらぁ。頑張ってくださいねぇ"
成る程。あのやる気のない先生が伊黒先生か。
そう頭の片隅で思いながらも、私のカメラのレンズは煉獄先生を追い続ける。
カシャカシャカシャ
連写モードで撮影し、煉獄さんのランニングとは違った本気の走りに私はシャッターをきりながらも魅了されていた。