第14章 ファインダー越しじゃない貴方と✳︎煉獄さん
私にはそのメッセージを受け取った煉獄さんのお顔が、とても嬉しそうに見えて
"もしかしたら煉獄さんも私と同じ気持ちなんじゃ"
そう思ってしまう程には充分だった。
甘やかに締め付けられる胸に、もっと近づきたいと思う煉獄さんとの距離に、私の心からは、煉獄さんへの恋心がもう溢れ出してしまう。
「…っあの…私…!」
私のこの恋心を、今すぐ伝えたい。そう思った。
けれども、
「すまない!この後予定がある!詳細については追って連絡させてもらおう!」
そう言うや否や、煉獄さんは私と一緒に腰掛けていたベンチから性急に立ち上がった。あまりの急な展開に、
今…もしかして…誤魔化された?
一瞬不安が頭を掠める。先程のやりとりから考えれば、私が何を言おうとしていたかくらい、頭の良さそうな煉獄さんなら分かりそうなものだ。気持ちを伝えるまでもなく拒否されてしまったのかと、ヒヤリと心がその温度を下げていく。けれども、
「来週は、文化祭の準備と部活の練習試合がある故、残念だがこうして柏木さんと会うことができない。だから、2週間後、会えるのを楽しみにしている!」
そう言いながら満面の笑みを私に向けてくれる煉獄さんに、私の胸は再びふわふわと、そして温かなものがジンワリと広がって行くのだった。
「私も…楽しみにしています」
2週間後に文化祭で会う事を約束した煉獄さんと私は、この日の、とても心地がいい時間を終わりにした。
…好きだなぁ。もっとたくさん一緒にいたい。早くこの気持ちを、煉獄さんに伝えたい。
そんな事を心の中で1人思いながら、遠ざかっていく煉獄さんの後ろ姿を
カシャッ
一枚だけそのカメラに収め
「…素敵」
私も帰路へと着いた。