第14章 ファインダー越しじゃない貴方と✳︎煉獄さん
それから私と彼、ランニングでこの森林公園を訪れているという煉獄杏寿郎さんは、時たまこの公園で顔を合わせ、話をしたり、私の撮影した写真を見る仲となった。私はといえば、当然のように彼に恋心抱き、会う回数が多くなれば成る程、私の気持ちもそれに合わせて、いや、それ以上に大きくなっていくのだった。
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煉獄さんにレンズの蓋を拾ってもらってから3ヶ月ほど経った頃。
「今度、俺の勤める学校の文化祭があるんだか、遊びにきてはもらえないだろうか?」
「…文化祭?」
いつものように私の撮った写真のデータを見終えた煉獄さんが、私の様子を伺うようにしながらそう言った。
「あぁ!うちの学園の文化祭にはちょっと変わった催しがあってな。毎年、男性教師陣が徒競走をするんだ」
「…文化祭なのに…徒競走ですか?」
「そうだ!柏木さんに…是非とも、俺の走る姿を見てもらいたいと思っている」
「…っ!」
好きな人にそんな事を言われ、期待しない人がいるのだろうか?
「予定が合えば是非とも「行きます!絶対に!予定があっても開けます!いつですか!?」」
言葉を遮るように言った私に、一瞬驚いた表情を見せた煉獄さんだが、
「そうか!それは良かった!」
と、まるで少年のようなキラキラとした笑顔を浮かべる。
…っ素敵すぎる!
「日程は、2週間後の日曜日の午後!場所は俺の務めているキメツ学園!大丈夫だろうか?」
「はい!問題ありません!」
「では、当日なにかあっては大変だからな。連絡先を交換しよう」
そう言いながら、私にカメラを返し、スマートフォンをボディバックから取り出す煉獄さんに
連絡先、交換できるの!?嫌だ!嬉しい!
嬉しくて小躍りしたい気分だった。
受け取ったカメラをリュックしまい、代わりにスマートフォンを取り出す。嬉しすぎて、スマートフォンのロックを解除するのに2度も失敗してしまい、危うく使用不可能になってしまうところだったが、なんとか無事ロックを解除し、メッセージアプリを起動させた。
「俺のIDはこれなのだが…検索してみてもらえるか?」
「はい」
言われた通りに検索画面で、そのIDを検索すると、煉獄さんに見せてもらったものと同じアイコンのIDが表示され、私はそれを友達に追加し、
「柏木です」
とメッセージを一言送る。