第14章 ファインダー越しじゃない貴方と✳︎煉獄さん
歩いていると
にゃーん
たまに見かける野良猫がベンチの上でゴロゴロと気持ち良さげにしていた。その姿が本当に気持ち良さげで、そしてとても愛らしくて、私は急いでカメラについているレンズを望遠レンズに取り替える。
かわいい!かわいい!!かわいい!!!
その場でしゃがみファインダーを覗き、次々とシャッターを切る。心の中は大興奮だが、逃げられてしまうのも嫌だし、気持ちよさそうにくつろいでいる猫の邪魔をしたくはない。
私はそのまま、その野良猫がヒラヒラと飛んできた蝶々を追いかけてその場からいなくなるまで、ずっとシャッターを切り続けていた。
撮れた写真のチェックをしようと、立ち上がり、カメラの画面を操作していたその時、
「良い写真は撮れましたか?」
「…っ!」
背後から声をかけられ、驚き振り向くと
…っやっぱり…あの時の…!
もう一度会えたらと思っていたその人が、そこに立っていた。
驚き、何も言えないままその顔を見ていると、
「道に落ちていたのですが、もしやこれはあなたのものでは?」
そう言って男性が右手で差し出したのは、見覚えのある黒い蓋。慌ててポケットに手を突っ込んでみるも、やはりそこにレンズの蓋は入っておらず、
「…っすみません!撮るのに夢中になっていて…落としてしまったようです」
緊張でほんの少し震える手を抑えながら
「ありがとうございます」
私は決して、男性の手に、自分の手が触れてしまわないように慎重にそれを受け取った。
「いいえ!初めは何かわからなかったのですが、よく見たら見たことのあるカメラの会社のロゴが入っていたので。なんとなくあなたの物ではないかと探していました」
ニコリと微笑みそう言う男性に、私の胸はもうどうしようもないほどのときめきを感じていた。
…これは…まずい。
「それはご趣味ですか?」
そう言ってわたしのカメラを指差す男性に、
「…っはい!そんなに上手ではないんですけど、風景とか!動物とか!場合によっては人とか…撮るのが好きで…っ!」
自分に興味を持ってもらえたという喜びをなんとか隠しながら答える私に、
「いいご趣味をお持ちですね!よければ少しで構わないので撮ったものを見せてもらえないでしょうか?」
男性はそう言ってニッコリと微笑み掛けてくれた。
「…是非、お願いします!」