第14章 ファインダー越しじゃない貴方と✳︎煉獄さん
すぐに手をひっこめ、痛みの走った箇所を見るも、特段変化は見られない。けれども、耳の横を”ブーン”と羽音を立てて通り過ぎて行った小さな蜂らしき姿が目に入り、頭に不安がよぎる。
蜂って…毒?あった気が…え…どうしよう。
少し痛み始める左人差し指に、私は焦りを感じ始める。
「虫に刺されたんですか?」
ふと、背後から聞こえてきた声に振り向くと、特徴的な髪型と眉を持つ、自分と同じ年代くらいと思われる男性が、私の手を覗き込んでいた。
その朝露に負けないくらい、太陽の光できらきらときらめく髪に、赤く綺麗な瞳に、私の心は一瞬で心を奪われた。
「…きれい」
ボソリと無意識に口から出てしまったその言葉に、慌てて右手で自分の口を塞いだ。
「すぐに水で洗い流した方がいい」
「…っ!」
そう言うや否や、その男性は私の左手首をパッと掴むとズンズンと腕を引き歩き始めた。
急な展開に、そして突然、見ず知らずの男性に手を引かれ、私の頭は半ば混乱しながらもなんとか足がもつれないようその男性の背中を追った。
公園の水道に到着すると、その男性は蛇口を捻り水を出した。そして、私の手を優しく引っ張り、ほんの少し腫れている患部に水を当ててくれる。この状況についていけない私は、男性にされるがまま、その真剣な目で私の指を見ている横顔をぼんやりと見つめていた。
その時、私の視線を感じたのか、男性がパッと私の方に視線を向け、男性の綺麗な赤みを帯びた瞳と、私の瞳がパチリと合う。
「…っ!」
どうしよう。目が…あっちゃった…見てるの…気づかれちゃった…!
自分の頬が熱くなるのが嫌でもわかり、私は思わず視線をサッと逸らし、瞳を左右に揺らす。