第13章 世界で1番耳心地のいい音【音好きシリーズ】

ふぅと一度大きく息を吐き、気持ちを落ち着かせ、私は善逸との物理的距離をつめる。

「善逸…ごめんね」

そう言いながら、善逸の顔をゆっくりと覗き込むも、善逸は私の顔をじっと見返すだけで何も言葉を発してはくれない。

「お願い…なにか答えてよ」

心優しい善逸にこんな顔をさせてしまったのは、他でもない私だ。罪悪感と、悲しさと、入り混じった感情で目の奥がじんわりと熱くなってくる。

ううん。泣きたいのは善逸であって…私じゃないはず。

もう一歩前進し、善逸との距離をさらにつめ、その両手を取る。

「…ごめん…本当に…ごめんね？」

「それは何に対して謝ってるわけ？」

「…っ…」

善逸が発したその声は、今まで私が善逸と交わしてきた会話の中で圧倒的に冷たく、その声色に更にじんわりと目の奥が熱くなる。

「なにも言わずに…いなくなった。善逸がそういうの、一番悲しむっていうの…知ってたのに」

「俺がどれだけ心配したかわかる？どれだけ探したかわかる？せっかくまたこうして一緒に過ごせるようになったのに。たった一人のかわいい弟弟子だって言ってたじゃん。あれは嘘だったわけ？」

矢継ぎ早にそう言われ、私の目からはとうとう堪えることが出来ずに、まばたきもしていないのに涙がボロボロとこぼれ落ちる。

私はいつからこんなにも泣き虫になってしまったんだろう。きっとあの熱い炎に、心の氷を溶かされてしまった時からだ。

「…っごめん…ごめんなさぁい…！」

善逸はそんな私の様子に、目を大きく見開く。そして、顔をぐにゃりと歪め

「やだぁ！ごめんねぇ！もう良いから！怒らないから！姉ちゃんに泣かれると俺辛いから！お願いだからそんなに泣かないでぇぇぇえ！」

そう言いながら、善逸も私に負けないくらいボロボロと泣きだした。

「ごめん…いくらでも謝るから…嫌いにならないで…」

ぐしぐしと両手で目を擦る私を、善逸はギュッときつく抱き締める。

「ならないよぉ！なるわけないじゃないのよぉ！」

そう言ってさらに激しく泣き出す。

「…ありがとう…大好きだよ…善逸。もう…絶対に…黙っていなくなったり…しないから…っ…」

そう言いながら、私も善逸の身体に腕を回し、私よりもすっかり大きくなってしまったその身体にギューっと強く抱きついた。

「俺も姉ちゃんが大好きだよぉぉお！！！」