第13章 世界で1番耳心地のいい音【音好きシリーズ】
''なぜ?"
"どうして?"
が頭の中をぐるぐる回り若干混乱気味の私の顔が面白かったのか、胡蝶様がクスクスと笑っている。けれども、コホンと一度咳払いをし、
「カナヲは…炭治郎君からいい影響を受けているようでして。あなたを心配し、探し回る炭治郎君、善逸君、伊之助君を見て、自分の見たことが何かの役に立てばと…そう思ったようです」
優しい微笑みを浮かべながらそう言った。
「…そんなことが…」
「私は、周りの人の気持ちを感じ取り行動することが、その人に、遂には自分にとっていい影響を及ぼすとカナヲにもっと知ってもらいたいんです。コインの裏表で何かを決めるのではなく、自分の意思で、自分の道を決めて欲しいんです。だから柏木さん。こんなことをお願いするのは気が引けますが、カナヲにあなたから直接、お礼…とまでは行きませんが、話をしてあげてもらいたいんです」
「俺からも頼む。彼女のその話を聞かなければ、正直なところ俺は君を探そうなどとは思わなかった。姿を消すこと、それが君の意志であれば何も言うまいと思っていた」
杏寿郎さんはそう言いながら、私の肩に置いたその手の力をほんの少し強めた。
答えなんて、考えるまでもなくすぐに出た。
「もちろんです。今度…善逸にでも頼んで、栗花落さんとお話しする時間を作ります」
その善逸と、話をすることがまずは第一関門だ。
「そうですか。ありがとうございます」
「ちなみに、栗花落さんの好きな食べ物って何かあります?」
「はい。カナヲはラムネが好きなんです」
「わかりました。それじゃあとびっきりのラムネを探して買っておきます」
「む!では俺も共に買おう!」
「ダメです。栗花落さんへの感謝の気持ちは、自分できちんと伝えるんです!杏寿郎さんからはまた別の機会にお願いします!」
「君は相変わらず冷たいな」
その私の返事を聞き、拗ねたようにそう言った杏寿郎さんを見て、
「…ふふっ…仲がよろしいようで」
胡蝶様は再びクスクスと笑っており、
「…っそんなこと…ありません…」
なんとも恥ずかしい私は、もじもじと指を動かし目を泳がせるのだった。