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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第12章 愛おしい音に包まれて【音好きシリーズ】※裏表現有


「ただいま戻りました」

ガラリとお店の戸を開け、奥さんに聞こえるように普段より大きめな声でそういうと、パタパタと足音を立てながら奥さんがやって来た。

「おかえり」

「遅くなってしまいすみません」

もう日が落ち始めており、杏寿郎さんと私がこの店を出てからだいぶ時間が経ってしまったことを示していた。

奥さんは私の方をチラリと見ると

「その様子だと…ちゃんと仲直りできたようだね」

そう嬉しそうに言った。私は奥さんが何故そんな含みのある言い方をするのかを理解できず、ほんの少し頭を右に傾けてしまう。するとそんな私の様子に気がついた奥さんが

「…服。出て行った時よりも着崩れてるよ。一体どこでなにをしてたのかねぇ」

そう悪戯な笑みを浮かべていう奥さんに

かぁぁあっ

と私の頬は急激に熱を帯びたのだった。

「さて、ふざけるのはこの辺にして。もう日も落ち始めて危ないから、あんた達中に入りな」

「はい」

「失礼する」

私と杏寿郎さんはその言葉に従い、奥さんの後に続き建物のお店部分を通り抜け、居間へと向かった。












居間に通された杏寿郎さんと私は、ちゃぶ台を奥さんと3人で囲み座る。

「奥さん…ごめんなさい。私…この人のところに…本来いるべき場所に帰ります」

奥さんは、嬉しそうな、それでいて悲し気な表情で

「そうかい。…それがいい」

そう言った。

「こんな得体の知らない人間を受け入れてくれてたのに…恩を仇で返すようなことを言ってごめんなさい」






’"お願いします!力仕事でも汚れ仕事でもなんでもやります!だから…私をここに置いてください"

"でもねぇ…力の必要な作業も多いし、あんたみたいな可愛らしい女の子に務まるとは思えないよ。…悪いけど他を当たってくれないかい"

"力には自信があります!その辺の成人男性より遥かにあります!だから…お願いします!"

"……わかったよ。こんな可愛い子に必死で頭下げられたら首をたてにふるしかないだろ"

"本当ですか!?ありがとうございます!!"






あの日、行き場を失った私は、確かにこの奥さんに救われた。




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