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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第12章 愛おしい音に包まれて【音好きシリーズ】※裏表現有


「頼むから君自身を大切にしてくれ。俺はよくて自分はダメなどと区別しないでくれ」

「…っ…」

「それにだ!すずねは俺のことが"大好き"なんだろう?ならば、過去の亡霊や、君の人生においてそう重要でない人間に言われた言葉より、俺の言葉に耳を傾けて欲しい」

そう言いながら杏寿郎さんは、私の左耳に愛おしげな視線を向けながら触れる。

その言葉に、杏寿郎さんの温もりに、心が救われた気がした。

「…はい…っ…」


心から好きだと思う。
他人にどう思われようと、
私が私を許せなくても
杏寿郎さんが
"好きだ"と"側にいて欲しい"と
そう言ってくれるのであれば
それだけでいい。

「…側に…いさせて…下さい…っ」

杏寿郎さんは私の耳から手を離し、私をギュッと強く抱きしめながら

「もちろんだ!だが君をこうして迎えに来るのはこれが最初で最後。もう二度と、何も言わずにいなくなったりしないで欲しい。俺はすずねのことを好いてはいるが、嘘をつくこと、約束を破ることは好きではない」

「…はい…もう絶対に…しない」

「うむ!悩み迷うことがあったら、一人で結論を出さず俺に必ず言うんだ。すずねが安心できるよう、俺は何度でも君が好きだ、ただ側にいて欲しいと伝え続けよう」

杏寿郎さんは私の身体から右腕だけを外し、ほんの少し身体を離した。そして、そのまま右手で私の顎を掴む。鋭く、なのに優しい隻眼が私の瞳をじっと覗き込み、


ちぅ


と優しく口付けた。



今まで生きてきた中で、こんなにも安心感に包まれたことはない。


こんなにも素敵な人に側にいて欲しいって言われるなんて…幸せだなぁ。


そんな風に思っている私の右目から、つーっと一線の涙がこぼれ落ちる。その涙は酷く暖かくて、泣いているのにも関わらず信じられないほど心地がよかった。

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