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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第2章 虎のような私の英雄✳︎煉獄さん


「あら?今日は女性の方なのね。いつもの人はどうかなさったんですか?」

「実は腰を痛めてしまいまして。なので本日は代わりに私が伺わせて頂きました」

「あらそうなのね。えっと…それは歴史のテキストよね。煉獄先生。頼んでいたテキストが来たみたいですよ」

応対してくれた綺麗な先生は、歴史の先生ではなかったようで、職員室の方に振り向くと、歴史担当の"煉獄先生"とやらに声を掛けてくれたようだ。

「そうか!今行きます!」

一瞬、その声に聞き覚えがあるような気がした。だが今は仕事中でぼんやりと考え事をしている暇はない。

「今来るので、少し待っててちょうだいね」

「はい。ありがとうございます」

綺麗な先生はそう言って、職員室へと戻って行ってしまった。煉獄先生が来る前に念のため、あらかじめバインダーに挟んでおいた注文の内容が書いてある紙と、持ってきたテキストの冊数に差異がないことを確認していると、半分程度しか開いていなかった職員室の扉がガラリと全て開かれた。

「ご苦労様です!お待たせしてしまいすまない!」

「いいえ。こちらこそお忙しい所すみせん」

台車に乗せてあるテキストから顔を上げ、パチリと目があったその相手は私が探し求めていたあの男性だった。

「…うそ…」

会いたい人との突然の再会に、私の頭と身体は活動を完全に放棄した。

「…む?君は確かあの時の」

煉獄先生も私の事を覚えていてくれたようで、

「俺があげたものは役に立っているだろうか」

とニッコリと私に微笑み掛けてくれた。

「…っはい!鞄に付けて…持ち歩いています!」

「そうか!それは良かった!では、テキストを受け取ろう」

そう言って煉獄先生は私に向かって手を差し出した。きっといつものように納品受領書を受け取ろうとしたのだろう。

今私は仕事中で、煉獄先生はお客様であることはよく理解している。それでも今、この時を逃したら次はない。



ダメでもいい。でも後悔するのは嫌。


バインダーを台車の上に置き、ポケットに入れてあった名刺入れを取り出すと、そこから一枚名刺を取り出した。

「あの…私、柏木すずねと言います!あれから…ずっと貴方を探していました!良かったら…連絡先を交換してもらえないでしょうか!?」

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