第1章 ONE And ONLY(仁王雅治)
「俺のものになると言うまでは辞めん」
そう言って、またあちこちに唇を這わせていく雅治。
そんなことを言われたもんだから、自然と涙も出てきて
「何で、泣くんじゃ。泣きたいんはこっちの方じゃ」
「だって、聞いて…くれないんだもの」
「なに?」
目線を合わせて来たと思ったら私の体を起こしてくれた雅治
「私は、雅治が好きなのに、それに気づいてないと思ってた」
「!?」
幸村君の言ったONE And ONLYは
「私の唯一無二の男は、目の前にいるのに
目の前にいるのに、遠い存在なんだもの」
「なんじゃ、それは。じゃったら、あんなブタや1人で東京になんて行くんじゃなか」
「え?」
「絶対に離さんから、練習も、試合も、俺の事だけ見ていんしゃい。他の男のテニスなんて見なくていいんじゃ」
「・・・っ」
「帰るぞ」
そう言って私の左手の薬指に付けたキスマーク
「・・・!?」
「ここは空けときんしゃい。いつかここにちゃんとしたものを付けてやるじゃき」
「・・・っ!ハイ」
部室を出るともう、外は真っ暗だったのに、肌寒い空気が今の私にはちょうど良かった