第2章 夢へのRestart
魂を貫くかの如く、梅のパンチが効いた声に思わずゾクゾクと体を心から揺さぶられる。
思わず顔を上げると、得意気に笑っている二人がかっこよく思えた。
マリナは曲にある歌詞の言葉の羅列から、ふたりと一緒に過ごしたころを思い出し、そして重ねた。
15年前
二人がにじいろ園に入所してきた時、二人は野犬のように周囲にいるすべての人間に警戒心をいただきながらも、二人で築いてきた強い絆の中では、暖かい空気に満ちていた。
火事で両親と優しかった最愛の兄を失ったマリナにはそれがどうしても懐かしく羨ましい光景に映った。
声をかけたのもそんなことがキッカケで、何度も邪険にされては泣きもしたけれど、それでもあきらめる事もなくその絆の中に自らも入っていく事を強く願ったのだ。
結果、施設長の息子でもあり、出入りもしていた童磨の介入もあって仲良くなる事ができてそこからが早かった。梅はいつしか「マリナお姉ちゃん」と呼ぶようになり、梅が懐いたマリナの事を妓夫太郎も受け入れはじめた。最初こそなかなか名前で呼ばなかった妓夫太郎は、妹以外に親しくすることに慣れていないからこその照れ隠しだったのかもしれない。
「ねぇ、マリナお姉ちゃん。アタシ、お姉ちゃん大好き。」
「わたしもね、梅ちゃん大好きよ。」
「お兄ちゃんも?」
「勿論!」
ある日、いつもの様に何気ない会話で梅はマリナからの愛を確かめ、笑顔で梅の気持ちを受け止めるように答えた。自分を慕う梅を可愛く思って。
「ねぇ、マリナお姉ちゃん。アタシ、アイドルになりたいな。」
「梅ちゃんならなれるよ。美人さんだし、歌もダンスも上手だから。」
ムスっとしてマリナを見る梅に、まずかったかなと思い、考えを巡らせる。
「じゃぁ、アイドルになる梅ちゃんを、わたしのお洋服でいっぱい応援するの!そして、そのお洋服で元気いっぱいに踊る梅ちゃんがみたいな。」
そうだ!それが一番いい!!そう思って我ながらに良い案だとワクワクするも、梅は泣き出しそうな顔をした。
「アタシ、マリナお姉ちゃんと一緒がいい。」
涙いっぱいに溜めて、そう訴える梅の言葉に、マリナの息が止まるのを感じた。
「マリナとお兄ちゃん、アタシとずっと3人でいるんだもん!そうじゃないとイヤよ!!」
強い眼差しに何も言えなかった。そう言って泣き出す梅をあの時は抱きしめた。