第2章 夢へのRestart
「良かったじゃない。しかも、童磨兄さんがいらっしゃるところでしょ?」
「そうなの!!でも、雲の上の人すぎて会えないの。童磨さんだけ、あんなになっちゃって......。でも、すぐに追いついちゃうんだからね!!」
「梅がいりゃぁ、間違いねぇな。」
「そうでしょ?お兄ちゃん!お兄ちゃん、凄いんだからお兄ちゃんがいれば百人力よ!!」
椅子の背にもたれて、気を許したように話すのは実の兄妹だから成し得ることだと微笑ましく思った。そのいいなぁと頬杖をついて見つめるマリナの視線に気づいた妓夫太郎が、ニヤリとマリナを見て同じように頬杖をついてみせた。
「まぁ、俺たちはこんな感じで順調なわけよ。マリナはどこ目指してフリーになったんだ???」
「えぇ?ワタシもそれ気になる!!」
兄に続いて妹も。同じような姿勢になってマリナに尋ねた。
「えぇ?それ、今聞いちゃうの?」
当然、夢があるからフリーになったマリナだが、それを先ほど十年近くぶりに再開したばかりの幼馴染に言うのは照れくさい。「なんだ?言えよ。」「そうそう、いっちゃえって!」そう仲良く囃し立ててくる。
「じゃぁ、言っちゃうよ?」
「うんうん!」
二人の視線が真っすぐにマリナを見ている。早く話せと言わんばかりに。そんな二人を相変わらず仲がいいなと思いつつ、ひとつ息を吐いていう決心をした。
「大きな舞台を目指して頑張る人を精いっぱいわたしの作る服で応援したい。」
兄妹の視線は再び二人の間に戻り、ハイタッチをした。
「なら奇遇じゃねぇか。俺たちもデケェ夢で大舞台狙ってんだぜ?なぁ、梅。」
「そうよ!!マリナお姉ちゃん。アタシたちと同じじゃない!!」
二人の雰囲気に乗せられるようにマリナも視線が上向きに輝くふたりを見た。
「もう一度一緒に夢追っかけよう?マリナ!アタシたちと大きな舞台目指そう。そして、3人で童磨兄さんに追いついちゃうの。もちろん、アタシが大好きなものをやっていった先でそうなる事が目標よ?」
梅がそう話している横で、スマホを操作する妓夫太郎。「俺たちの新曲だ」と見せてきたスマホの画面にはイラストで描かれた二人の中心に二人のユニット名である”shabana"の上に縦書きで『約束』と書かれている。「聴いてみろよ。」と差し出されたワイヤレスイヤホンを受け取って装着すると、再生ボタンが押された。