第2章 夢へのRestart
だけど、どんなに嬉しかったろう。自分のことをこんなにも慕ってくれることを示してくれるということが。一度失くしてしまった兄妹の暖かさが自分に戻ってきたような気さえした。
「うん。ずっと一緒。わたしも梅ちゃんとお兄ちゃんと一緒がいい。」
「言ったわね?忘れんじゃないわよ?!」
「うん。忘れない。」
”ねぇ、アタシらさ、絶対大人になったら一緒にアイドルやろうよ”その言葉はその時から、梅が定期的に言うようになった。そして、ずっと言い聞かせられたマリナも、それがいいと思うようになっていったのだ。
イヤホンから流れる曲は、幼い友人同士誓い合ったことを今叶えていこうという内容で、夢を追いかける人たちへの応援ソングともいえるアップテンポの曲だった。
まるで、マリナとの再会も予期していたようなタイミング。運命だと思った。
身内の欲目でもない。プロを現場で支えてきた一人のプロとしても応援させて欲しいと思えるほどの二人の実力に迷う余地など無かった。
「ちょうど、専属でやってくれる奴探してたところだったんだ。マリナが良ければ引き受けてくれねぇか?ガキの頃から気心の知れてるし、その才能も知ってんだ。
梅も同じ気持ちだと思うが、お前が今もそっちの業界で頑張ってるんなら、お前以外にやって欲しくねぇ。」
「勿論、アタシもこんなタイミングでマリナに会えたんだから、ベストタイミングだと思うの。マリナもそう思ってくれるわよね?」
いつになく真剣な表情で、彼らが本気で自分という職人を必要としてくれていることは明らかだ。ならば、こちらが応えない理由など無い。そして、TGCの後、大きな仕事を抱えていなかったマリナは絶好のチャンスでもあると思った。こちらとてベストタイミングだと。
「何年振り?こんなにワクワクするの。引き受けるに決まってるじゃない!」
感慨深くて涙が溢れてくる。それは目の前の二人だって同じで、充血して赤くなった目で笑みをこぼした。
「んもぅ!!マリナだったら、そう言ってくれると思ってた。」
「また3人だな。」
「また、よろしくね。」
「当たり前だァ。」