第2章 夢へのRestart
「白戸川殿の評判は、私もよく耳にします。お二人の事をよく知っておられるならば、お二人の良さを最大限に引き出してくれることでしょう。ご希望通りになりますようお手伝いさせていただきます。」
僅かに口角を上げて話す縁壱の様子から、この話を肯定的にとらえてくれるようで心強く思った。「話が分かって助かる。」にやりと笑う妓夫太郎に視線を送ると前を向いて、「ご案内いたしましょう。」と鬼舞辻氏が待つ部屋へと向かった。
「無惨。来たぞ。」
「縁壱。客の前では私を敬うそぶりでもしたらどうだ。」
「お前の下についたつもりはない。兄に対する貴様の行動の監視が私の目的だ。それを忘れさせてはならぬ故。」
「公私を弁えろと常に言うのはお前の方ではないか。」
互いに敵意を向ける事を隠さない二人。二言三言言葉を交わすと3人に鬼舞辻が向き直り「座れ」と席に着くことを促した。
3人は「有難うございます。」と会釈をして席に着いた。
「私に直談判とはいい御身分だな。」
ニヤリと冷たい笑みを浮かべて、テーブルに肘をつき両手を組んだ奥から桃色の瞳が鋭くこちらを見ている。
「だが、今、私はすこぶる機嫌が良い。よくぞ白戸川を引き込んだな。」
実のところ、鬼舞辻は白戸川が宇髄氏の元で活躍し始めてから喉から手が出るほど欲しい人材だったという。しかし、宇髄氏と産屋敷氏が”彼女を一人前に育てるため”としてマリナを手放さなかったのだ。
そして、コンクールでは数々の賞を受賞。ショーの衣装も、舞台の衣装も手掛けるようになり結果を残して見事”一人前”と認められ、晴れてフリーになった彼女が謝花兄妹を通じて目の前にいるのだ。
「我が社へようこそ。白戸川マリナ。申し遅れたが、私がここのCEOを務める鬼舞辻無惨だ。」
「鬼舞辻様。お見知り置きいただきまして光栄に思っています。白戸川マリナです。」
互いに名刺交換を終えると再び席に着いた。
「私の事務所の海外支社にはUpper Moonもいるが、そちらに就くつもりはないのか?今のお前ならば十分に最適な場所だが。
童磨も私もお前がUpper Moonに就くことを願っている。こんな好条件はないと思うぞ。」