第2章 夢へのRestart
時刻は深夜に差し掛かろうとしている。
当然のように先陣を切って会計を済ませる妓夫太郎に遅れまいと後ろをついていって礼を伝えると大きな手でマリナの頭を撫でた。
とあるエリアのひときわ目立つビルへ、タクシーでたどり着く。
支払いを済ませて急ぐようにエレベーターへと乗り込んでは、3人を引き上げるように最上階へといざなう。
英語で書かれた社名がスタイリッシュに輝いて、そこへ気配を消すように大きな影が視野に入ってきた。
「夜分に無惨が動き出したと思えば...。貴方は確か...。」
「秘書の継国様ですね。白戸川マリナ"と申します。最近まで宇髄アパレル研究所におりました。」
彼が秘書であると分かっていたので、密に用意をしていた名刺を差し出した。すると纏う雰囲気が柔らかくなったような気がしてフッと彼を見上げた。赤みを帯びた長髪に整った気品のある顔立ちに額に炎のような模様の痣がある。表情は無いに等しいけれど、物優しそうな雰囲気を纏った不思議な男性だ。
しかし、高圧的で冷徹な鬼舞辻社長をコントロールすることが出来るという話から、常識人であっても屈強そうなイメージがあったのでマリナは拍子抜けしてしまっていた。
秘書縁壱は、名刺を受け取り自分の名刺を差し出した。
「社長が夜分にお呼び立てして申し訳ございません。私は秘書を務める継国縁壱と申す者。様子を見たところ、お二人が白戸川殿と組まれるということを社長に伝えに来られたということで?」
語尾がですます調ではなくとも選ぶ言葉が上品で畏まっている。まるで武士のように思った。
「あぁ。昔の馴染みで、お互いがお互いの事をよく知ってんだ。これ以上の適任が他にいるかよ。」
「そうよ。わたしたちとマリナには会ってなかったブランクがあるけどそんなのすぐに埋まるわ。マリナは凄いのよ?」
二人がここぞとばかりにマリナがいかに自分たちにとって欠かせない逸材であるかを語り始めた。それをどこか穏やかな雰囲気で聞いている。