第2章 夢へのRestart
返せと差し出された妓夫太郎の手にスマホを置くと、「善は急げだ。社長に電話する。」と早速目の前で電話をかけ始めた。本来ならば、マネージャーであり、企画顧問の音川鳴女を通して社長の鬼舞辻無惨が最終決定をするのだが、いわば直談判をするという。
噂では高圧的で冷徹と聞いている。様々な不安や懸念を抱いて妓夫太郎を見た。
「無惨様。謝花です。お忙しい所、恐れ入ります。専属にしたいスタイリスト、デザイナー見つけたんで、紹介したいのですが.....。」
『何を考えている。貴様らが用意したところで大したものにはならんぞ。』
電話口から、僅かに漏れる声は噂通り威圧感が凄まじい。
しかし、マリナを専属にしたいという意志が強い妓夫太郎は、その圧に臆することはない。
「”白戸川マリナ”であってもですか?」
『白戸川?宇髄のところの、あの?』
「無惨様ならば、ご存じのはずです。」
『何故その者と繋がりがあるのだ。比類なき天才だぞ。』
「俺の幼馴染で、先ほど再会しました。話はもうついています。」
『今、どこだ。』
「○○で一緒います。」
『解った。事務所に来い。』
「畏まりました。」
間がない会話を終えると、スマホを置いてマリナを見た。
「社長の指示は”ある例外を除いて”絶対である。がうちの事務所の鉄則だ。きっとあの人もいらっしゃるから大丈夫だ。」
「急だね。なんか悪いな...。」
「何言ってるんだ?俺たちが頼んだことだぜ?」
妓夫太郎は不敵に笑みを浮かべて席を立つ。梅をそれが解っているようで同じように席を立った。
「マリナ、すごい人なのね!社長も少し声色が変わったもの。」
「凄くはないよ?自分がしたいことさせてもらってるだけなんだから。」
興奮している梅にやんわりと謙遜して言葉。驚いた顔で何かを言いそうなそぶりを遮るように付け足した。
「でも、二人をバックアップする事に全力を尽くすよ。」
「嬉しい!!アタシもマリナのお洋服着て、マリナをいっぱい見てもらうんだからね!」
嬉しそうに笑って見せる梅に幼い頃夢を語らったあの日を思い出す。
「行くぞ。俺たちの事務所。これから直談判だ。」
「ドキドキするなぁ。」