第2章 出国
韓国に着いてからまた車に乗る。
東京駅で乗った車とあまり変わりはないが、1つだけ大きな違いがあった。
それは、窓のカーテンが全て閉まっていることだ。
後部座席に座るとフロントガラスも見えない。
前席と仕切るように大きなカーテンがついている。
この車は完全に外の情報を遮断しているのだ。
○○(もう恐怖しかない……。私の人生終わった……。)
ひきつった顔をしている私を見て心配したのか、パクさんは、“誘拐じゃないから大丈夫ですよ”、と少し笑って声をかけてくれた。
いや、全然信用できない。
どのくらい走ったのだろうか、車のエンジンが止まった。
パク「長い移動お疲れ様でした、到着しましたよ。降りて頂いて大丈夫です。」
自動で開いた後部座席のドアから見えた景色は自然豊かな場所だった。
でももう空はすっかり暗くなってしまったので、見てわかるのはそれくらい。
ゆっくり歩くパクさんの後を追う。
駐車場も広かったが目の前の別荘みたいな建物はもっと広そうだ。
○○「もしかして…」
パク「はい、あなたが働く場所はこちらになります。
とりあえず、まずは紹介しなくてはいけない方々がいるのでね、中に入りましょう。」
見て分かる。ここに住んでいる人はただもんじゃない。
また汗が噴き出す。
庭もとんでもなく広い。ちょっとした運動会はできるだろう。
玄関に入ると確実に複数人住んでいることが分かった。
靴の置き方に性格が出ている。
揃えてある靴。
脱いでそのまま部屋に上がった靴。
左右散乱している靴。
長い廊下の先に明かりがついていた。
どうやらそこに住人が待っているようだ。
パク「ここからはすみませんが韓国語になります。
もちろん住んでいる方たちは韓国人なので。
あ、私も韓国人ですけどね、ははは。」
ちっとも面白くなかった。
今の私には笑う余裕なんてない…。