第1章 リップ【国見英】
「英くんのこと、好きって言ったこと?」
「違う」
「………どれ?」
「俺がのこと好きにならないって」
相変わらず英くんの手は、私の左手の甲を撫でている。
「だって………」
「俺はのことが好きなのに、なんでそんなこと言うの?」
優しい、英くん。
時間が止まる。
「………え?」
「俺もとおんなじ気持ちなんだけど。
ねぇ、今日の合コン。行くの?」
夢を見ているのかな?
目の前には、中学生の頃より
身長がもっと高くなって、大人になって
もっともっとカッコよくなった英くん。
「行か、ない………」
「うん。そうして?
あと、やっぱりにはそんな派手なリップは似合わない」
「………うん」
好きって言ってもらえて、すごく嬉しい。
夢みたい。
だけど英くんからの「似合わない」は、
やっぱり心にチクリと棘が刺さって
思わず下を向く。