第10章 ホットチョコレート【岩泉】
タクシーを降りて、
やっぱり特に話すこともなくエレベーターに乗って
私がバッグから鍵を取り出そうとしたけど。
「あ、俺が開ける」
「なんで?」
「だって自分家だろ」
あーーーー
ダメだ、だめだ。
抱きつくのはちゃんと
鍵を閉めてからにしよう。
とりあえず
少しぬるくなったホットチョコレートをもうひと口。
うん、甘い。
エレベーターを降りて
宣言通り?はじめくんが鍵を開けてくれる。
「「ただいま~」」
そして私が鍵を掛ける。
「、それ貸して」
「はい」
私の手からホットチョコレートを受け取って
飲むのかな?と思っていたカップは
はじめくんの口元には届かずに、
そのままシューズボックスの上に置かれて。
「甘い」
抱きしめられて、久しぶりのキス
の感想。
「はじめくんは苦い」
「だって待ってる間、コーヒー飲んだし」
「そっか」
ふっ、と
同時に、顔を見合わせて笑い合える
この距離がどうしようもなく愛おしい。
「はじめくん、おかえり」
「おう。ただいま」
もう一度、さっきよりもっと深く
私の唇が塞がれる。
はじめくんの大きな手が
私のほっぺを包み込む。
あぁ、やっぱり苦い。
だけど、苦いそれも
どうしようもなく甘く感じる。
ホットチョコレートより、
もっと、もっと
--- end ---
2022.3.12
(remake)
こちらは「初恋【岩泉一】」の数年後の二人です。
この二人が付き合うまでのお話しも別の小説として書いているので
よろしければそちらもぜひ(^^)