第10章 ホットチョコレート【岩泉】
『ん。あ、今日帰り電車だよな?』
「そうだよー。今駅に向かってる」
『最近また寒くなったけど、風邪よくなった?』
「よくなったって言ってるじゃん~!」
『お前すーぐ嘘つくからな。
あ、ちょっと待ってて』
「はーい?」
待てって言われたからスマホはそのまま耳にあてて
駅に向かってひとり歩く。
あーーーー
でもほんと寒いな。
今さらだけどやっぱり
地元で着てたみたいな、
もっと防寒できるようなコート
というかダウンを新調しようかなぁ。
ただ、電車だとちょっと暑すぎるんだよねぇ。
だから毎年見送る防寒着
だけど今年は一段と寒い気がする。
そして、ひゅうっと通り過ぎた北風に
思わず肩をすくめる。
宮城の、体の芯から冷えていく
あの冷たさを思い出す。