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【ハイキュー】キミが好き【短編集】

第5章 帰り道【北】


北さん、さっきも言ってた。




だけどさっきと違うのは


その視線が空ではなくて、私に向いているということ。




北さんの表情は

三日月が光るくらい


柔くて、優しい。





北さんの言葉を思い出す。





"夏目漱石、知ってる?"





「あ」





思わず間抜けな声が出た。





「なんや」



「や、北さんが言ったこと」



「わかった?

な?忘れてええってゆうたやろ?」





さっきまで私に向けてもらっていた視線は

今は空を見上げてる。



ただ、北さんが言ってくれたこと。





「…………北さんは覚えてへんと思いますけど」



「ん?」



「前にみんなでテスト勉強してた時、

この言葉、教えてもらいました」





夏目漱石は「I love you」を


「月が綺麗ですね」


と訳したそう。





「それ聞いて、私がそんなん言われてみたいな〜って言ったら

北さん、今時そんなん言うやつおらへんやろ、って」



「…………覚えてるよ」





どうしよう。


何が起こっているのかよくわからないけど。




ただ、一生言わないと思っていた

この、気持ちを





「ねぇ北さん。私も

すごくすごく、月が綺麗だと思います」





こんなにも綺麗な言葉で伝えることができる日が来るなんて。





「え?ほんまに言うとんの?」



「こんなこと、北さんに冗談で言えません」



「俺以外には言うんか?」



「何言うてるんですか!

北さん以外にこの言葉は言いません!」



「………ほんまに?」



「私にずーーーっと彼氏がいない理由は、

バレー部、よりも。


北さんのせいですよ?」



「………まじか」





こんな北さんは初めて見る。


それも、私の言葉に動揺してくれているのが

どうしようもなく嬉しい。





「北さん、私と付き合ってくれませんか?」





いつも通りの帰り道



空には薄く

雲の隙間から三日月が輝く



隣には、七ヶ月振りの

ずーっと大好きだった北さん





月が、どうしようもなく綺麗だ。
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