いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第9章 私の嘘
−沙羅side−
「…大丈夫かい?」
『……治?』
落ちてきたはずの本と資料の山、
なのに何処も痛くないと思ったら
私を後ろから庇うように
治が本棚に両手を付いて立っていた
「沙羅って時々危なっかしいよねぇ…」
『う、ごめん』
確かに今のは完全に私の不注意だった
普通に考えて私の身長で
あの高さの本を取るのは無理がある
「まぁ、可愛いから私はそれでいいと思うけれど」
『もー…私の事口説いても何も出ないからね?』
この人はよくサラッとこう言う事を言う
初めのうちは多少動揺したけど
このタイプは流石にもう慣れた
だってどうせ、
街中の女の人に心中を申し込むのと同じで
しょっちゅう色んな人に言ってると思うから
「………なら…どうしたら伝わる?」
伝わるって何が?
そう言おうとした時
治と真っ直ぐ視線が合って、
言葉は喉の奥に引っ込んでしまった
治の目は、いつにも増して真剣で
“言いたいけど、
言えない事がある”
私には、そんな風に見えた。
「沙羅、私はね…」
治の右手が、そっと私の右頬に触れた