いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第6章 人生万事塞翁が虎。/ 闇と光
「太宰さん、何を言って……」
『敦君が街に来たのが二週間前、虎が街に現れたのも二週間前。敦君が鶴見川べりにいたのが四日前、同じ場所で虎が目撃されたのも4日前。』
「国木田君が云っていただろう。“武装探偵社”は異能の力を持つ輩と寄り合いだと。巷間には知られていないがこの世には異能力を持つ者が少なからずいる。その力で成功する者もいれば………………力を制御できず身を滅ぼす者もいる」
太宰と沙羅が淡々と言葉を続ける中
敦の姿は瞬く間に人から獣へと変化していた
真っ白な
虎の姿に。
「大方、施設の人は虎の正体を知っていたが君には教えなかったのだろう。君だけが解っていなかったのだよ。君も異能の者だ、現身に飢獣を降ろす月下の能力者………」
月明かりに照らされて虎の瞳が鋭く光った
虎は大きく唸り声を上げながら
太宰と沙羅に向かって突っ込んでいく
「こりゃ凄い力だ。人の首くらい簡単にへし折れる」
『こんな時まで、分析してて怪我しないでよ?此処からは治にかかってるから、後は頼んだよ』
「あぁ、勿論。」
とくに焦る素振りもなく
2人は軽々と虎の攻撃を避けた
「獣に喰い殺される最期というのも中々悪くはないが、君では私を殺せない」
虎の真正面に立った太宰は
虎に向かって左手を伸ばした
“人間失格”
同時に、
「私の能力は、あらゆる他の能力を触れただけで無効化する」
太宰の異能に包まれた虎は、
静かに敦の姿へと戻り始めた。
完全に人間の姿に戻った敦を
太宰が抱き止めると
「男と抱き合う趣味はないっ」
支えてくれたかと思いきや
敦をポイっと地面に放り投げた。
『ちょ、扱いが雑だって!』
その時、倉庫の入り口から
2人の名前を呼ぶ声が聞こえてきた
「おい太宰!沙羅!」