いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第6章 人生万事塞翁が虎。/ 闇と光
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港の近くの一つの倉庫で
太宰、沙羅、敦の3人は
虎の出現を待っていた
「…本当にここに現れるんですか?」
「本当だよ」
敦の問いにさらっと答えた太宰は
手元で“完全自殺読本”なんていう
物騒な本を開いていて
敦は思わずじとっとした目で太宰を見る
『治ってばまた物騒な本読んでるし…それ面白い?』
「面白いよ。沙羅も読むかい?」
『いや、遠慮しとく…』
虎を待っているというのに
危機感のない2人を見て
敦は少し不安が大きくなってきた
「心配いらない。虎が現れても私達の敵じゃないよ。こう見えても“武装探偵社”の一隅だ」
その不安に気づいた太宰は
優しく敦に声をかける
「はは、凄いですね自信のある人達は。僕なんか孤児院でもずっと駄目な奴って言われてて…そのうえ今日の寝床も明日の食い扶持も知れない身で。こんな奴がどこで野垂れ死んだって…いや、いっそ喰われて死んだほうが…」
どこまでもネガティブ思考な敦、
その姿を見た太宰と沙羅は
何も言わずに風の流れを感じていた
『そろそろ、だね』
ガタン、という物音が倉庫に響いて
もう一度3人に緊張が走る
「今……そこで物音が!きっと奴ですよ!」
「風で何か落ちたんだろう」
「ひ、人食い虎だ。僕を喰いに来たんだ!」
「座りたまえよ敦君。虎はあんな処からは来ない」
「ど、どうして判るんです!?」
慌てる敦とは反対に、
太宰と沙羅は凄く落ち着いていた
「そもそも変なんだよ敦君。経営が傾いたからって養護施設が児童を追放するかい?大昔の農村じゃないんだ。いや、そもそも経営が傾いたなら一人や二人追放したところでどうにもならない。半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ」