いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第6章 人生万事塞翁が虎。/ 闇と光
『で、3人で何してたの?』
改めて4人で席に座り直すと、
沙羅がそう問いかけた
「虎探しだよ」
『それは知ってるけど、お店の中で?』
「さっき川で敦君と出会って、空腹だったみたいだからこの店にはいったのだよ。そしたら敦君は虎の目撃情報を持っているらしくてね、聞いた途端逃げ出そうとしたから、そこで国木田君がバーンと。」
『バーンと、って……』
近頃街を荒らしている“人食い虎”
倉庫を荒らしたり
畑の作物を食ったり好き放題で
最近この近くで目撃されたらしい
太宰達は仕事でそれを追っている
「それで、敦君。虎の事について知っている事を教えてもらおうか」
先程まで逃げる気しかなかった敦も
流石に諦めたようで渋々と話し始めた
「……うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです。畑も荒らされて倉も吹き飛ばされて。死人こそ出なかったけど貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって、口減らしに追い出された」
「………そりゃ災難だったね」
「それで小僧、“殺されかけた”と云うのは?」
「あの人食い虎…孤児院で畑の大根食ってりゃいいのにここまで僕を追いかけて来たんだ!孤児院を出てから鶴見川のあたりをふらふらしてた時…あいつ、僕を追って街まで降りて来たんだ!空腹で頭は朦朧とするしどこをどう逃げたのか…」
そこまで話して、
敦は落ち着いてから姿勢を正した
「それ、いつの話?」
「院を出たのが二週間前、川であいつを見たのが…四日前」
「確かに 虎の被害は二週間前からこっちに集中している。それに四日前に鶴見川で虎の目撃証言もある。」
国木田がそう云った後、
何処かを見つめたまま
黙って何かを考えていた太宰は
“良いこと思いついた!”
とでも言いたげに敦を指差した